■この本を読むことになったきっかけ

 

ミステリに目覚めた際に手に取りました。「ミステリといったらアガサ・クリスティ!」というなんとも単純な理由です。

 

クリスティ作品は他にも『オリエント急行の殺人』『アクロイド殺し』『ABC殺人事件』など名作揃いですので、何を読もうか迷ってしまうところではありますが、迷わずこれを選んだのは「タイトルがなんだかカッコイイ」という理由で、いわば直感のようなものでこの作品を読みました。

 

■本のあらすじ

 

8人の年齢も職業も異なる男女が、U・N・オーエンという謎の人物からの招待状を受け取り、イギリスのインディアン島に集まりました。島には2人の召使夫婦がいるだけで、招待したオーエン氏はいませんでした。

客人たちが到着したその日の夜、晩餐の席で彼らの過去の罪を告発する声が聞こえてきました。皆が怯えている中で、屈強な青年マーストンが毒殺されます。翌朝には召使夫婦の妻の方が眠っている最中に死亡しました。

相次いで2人が亡くなる異常事態の中、食堂に置かれた10体のインディアン人形が8体に減っており、壁に掛けられた童謡が2人の死にざまに似ていることに気付きます。

島を出ようにも連絡手段や移動手段がなく、全員が島に閉じ込められてしまいました。
この中に犯人がいる。そう互いに思ったまま、次々に童謡の通り殺害されていきます。

 

そしてヴェラとロンバードが2人きりになり、ヴェラは彼から銃を奪い射殺します。罪の意識と絶望感から、ヴェラはいつの間にか自室に用意されていた縄で首を吊って死んでしまいました。

後日警察が介入しても解決はしませんでした。しかし、海を漂っていた瓶の中に手紙は入っており、それによって真相が明らかになり、ようやく真犯人が誰かが判明することになります。

 

■感想、意見

 

恐らく、世界で一番有名なミステリ小説です。

現在のミステリ小説…特にクローズドサークル物や、見立て殺人、童謡などをモチーフにしたマザーグース殺人などの基礎を作ったのは、恐らくこの作品だと思います。

様々な作品に多大な影響を与えている本作ですが、世界中に無数に存在するクローズドサークル物、見立て殺人物のミステリには越えられない面白さがあると思います。

それは「話運びのシンプルさ」「良い意味での話の不透明さ」「全員死亡という衝撃」です。

 

話運びについては、様々なミステリが世に溢れている現代だからこそ実感できることだと思うのですが、見知らぬ男女数名が謎の人物に招待され、孤島に閉じ込められてそこで殺人が起きる…という単刀直入さが読者を引き込んでいると思います。

 

殺人の前段階が長すぎるとだれてしまいますからね。

次に話の不透明さについてですが、童謡になぞらえて一人また一人と殺されていくのに、まったく犯人も分からなければ手掛かりもよく分からない…という不気味な謎が「どんな結末になるのか予想がつかない!」とワクワクさせられます。

そして、ミステリでは異例の「全員死亡」という衝撃の結末。

 

途中までは「トマスが犯人だろう」とか「医者のアームストロングが怪しい」とかあれこれ推理するんですが、容疑者が次々と消えていき、最終的にヴェラだけが残り、しかも彼女も首を吊って死んでしまうので「全員が被害者なら、誰が犯人なのか?」とわけがわからなくなってきます。

 

ミステリと言うと、何名か生き残るのが王道なのですが、本作は敢えて全員を被害者にするという大胆な試みをしています。

 

ちなみに私は、読んだ当初は一番最初に殺されたマーストンか医者のアームストロングが犯人だと思っていました。

理由は「一番出番が少ないのはかえって怪しい」「医者ってだけでなんだか怪しい」という論理の欠片も無い理由です。当然、大外れでした。

 

■本を読んでいて自分が初めて知ったモノ、場所、言葉など

 

これだけ有名な作品ですので、世界中で映像化や舞台化がされています。

 

本場イギリスやアメリカ、ロシアで映像化されてきましたが、2017年3月に日本で初めてドラマ化されました。

仲間由紀恵、向井理、柳葉敏郎、沢村一樹など出演者が全員主役級という豪華さでした。渡瀬恒彦さんの遺作でもあります。

日本で今まで映像化されてなかったというのが意外でしたが、初のドラマ化ということで非常に丁寧に作られていました。ストーリーの大筋は原作通りです。

違う点は、島の名前が「兵隊島」になっていること。スマートフォン、ドローンといった現代の道具が登場すること…スマートフォンが使えなくなるシーンが付け加えられています。
他にも原作と異なる点はありますが、どれも現代の日本に合わせたアレンジをしており、最後もまで楽しんで見ることが出来ました。

 

『そして誰もいなくなった』のドラマ化は初ですが、この作品に影響を受けた横溝正史の『獄門島』、米澤穂信の『インシテミル』は映画化されています。

『インシテミル』は特に『そして誰もいなくなった』を意識して作っている小説なのですが、映画は「藤原竜也や綾瀬はるかを主演にしてるのにどうしてこんなにつまらなくなったのか」と思ってしまうほど酷いものでした…。

 

■本の中で気になった言葉、セリフ 1シーン

 

主人公(と呼んでも差し支えないポジションだと思います)のヴェラがロンバードから銃を奪い、彼を撃ち殺し、とうとう一人になってしまってから屋敷で首を吊るまでのシーンが、本作の山場であり、私の一番好きなシーンです。

ロンバードが撃たれて死ぬことも、ヴェラが絶望感と罪悪感で用意された縄で自然と首を吊ることも、すべて犯人の思惑通りというところに恐ろしさを感じますし、忘れられない強烈なインパクトを与えるシーンだと思います。

初めて読んだ時から時間が経っていて、童謡の中身や犯人が誰だったか忘れてましたが、このシーンだけはよく覚えていました。