フィクションの小説も面白いけど、たまには違う雰囲気のものを読んでみたい…そんな方におすすめなのが、歴史小説です。

 

歴史上の事件や人物について描かれた小説は、昔は小難しく長いというマイナスイメージを持たれがちでしたが、近年では読みやすい文章や内容のエンターテイメント作品が増えて来ており、活字に慣れていない人でも安心して楽しく読めるものが多くなってきました。

 

ちょっと歴史小説を読んでみたい…そんな歴史小説に興味を持った方におすすめの作品をご紹介していきましょう。

 

1)三国志 /北方謙三

 

時は後漢末期の中国。政治は腐敗し国は乱れた。そんな乱世で信義を貫き、野望に燃える群雄たちの興亡を描いた群雄劇。

 

三国志は中国史の中でも非常に短い時代ですが、日本では昔から大人気です。

 

三国志と言ったら吉川英治の『三国志』、漫画なら横山光輝の作品がメジャーですが、今回ご紹介する通称『北方三国志』はこれまで多くの作家が描いてきた三国志とは全く異なります。

 

これまでの三国志は「三国時代の歴史物語」や「国の興亡と英雄譚」が話の中心でしたが、この三国志は「男の生き様」が濃厚に描かれています。

 

歴史小説という体裁のハードボイルド小説と言っても過言ではありません。

 

三国志って色んな人が書いてますので、割とキャラクターのイメージが固定化されてしまっているのですが、本作はまったく新しい人物像を叩き出してくれてますので、「もう三国志は飽きたよ」と思っている方でも楽しめる作品になっています。

 

全14巻ですが、そこまで長く感じません。文章にくどさが無いので、歴史小説初心者にはおすすめです。

 

2)壬生義士伝 /浅田次郎

 

貧しさから南部藩(現在の岩手県辺り)を脱藩し、新撰組に入隊した吉村貫一郎という男がいた。守銭奴などと言われながらも、家族のために人を斬り死んでいった男の、義と愛の物語。

 

話は大正4年、ある記者の取材で複数の人物からの聞き取りという形で進んでいきます。最初は分かりにくいと感じるかもしれませんが、読み進めるうちに吉村貫一郎という男の人物像が、こんなに人によって印象が変わって来るのかと感慨深く思えてきます。

 

幕末や新撰組が舞台になっている話は、悲劇的で血生臭いものが多いのですが、本作はあくまでも「吉村貫一郎の生涯」に焦点を当てているため、歴史小説特有の猛々しさや血生臭さはありません。

 

どちらかと言うと人情物語のような印象を受けます。

 

話の内容から『永遠の0』とよく比較されるそうですが、どちらも「男の生涯」「男の生き様」を描いてはいるものの、『壬生義士伝』に関して言えば、男と言うよりは「武士道」を描いていると思います。

 

口ではなかなか説明しにくい武士道ですが、この小説を読むと「あぁ、これが武士道というものなんだなぁ」と理解できます。

 

金のために人を斬る、家族のために人を斬る、義のために人を斬る…満身創痍で切腹した吉村の生き方に涙が出ます。

ちなみに、吉村貫一郎は新撰組に実在した人物です。

 

3)馬上少年過ぐ /司馬遼太郎

 

歴史小説の大御所、司馬遼太郎の7作品から成る短編集。表題作『馬上少年過ぐ』は奥州の覇者伊達政宗の生涯を描いています。

 

その他、江戸時代末期に活躍した絵師田崎草雲、賤ケ岳七本槍の脇坂甚内の生涯を描いた短編が収録されています。

 

元々司馬遼太郎氏の文章が読みやすい上に、ひとつひとつが非常に短い話ですので、活字に慣れていない人でも短時間で読み終えることが出来ます。

 

筆者はこの短編集を読んだ時「どうしよう…伊達政宗以外あんまり知らない」と思ってしまいました。一応史学科行っていたんですがね…。

幕末辺りになるともう分からないです。

 

そんな偏った日本史知識でも、全く問題なく読み進められます。日本史まったく知らないという人でも楽しく読めるのが司馬遼太郎作品の凄いところで、本作は短編集ということもあり初心者にはおあつらえ向きです。

 

筆者がこの短編集で一番好きなのは表題作の『馬上少年過ぐ』です。題名になっている文は、政宗が詠んだ漢詩の一部です。

 

政宗は野心溢れた人物でしたが、詩歌の才もありました。司馬遼太郎氏はそんな政宗を、三国志の英雄である曹操に例えています。

 

曹操もまた頭が良く詩歌の才もあり、大胆な野心家でした。よく織田信長が曹操と比較されますが、敢えて伊達政宗を選んでいるところが面白いと思いました。

 

4)のぼうの城 /和田竜

 

天下統一を目の前にした秀吉が落とせない城があった。それは周囲を湖で囲まれた天然の要塞、忍城(おしじょう)。

 

城主の成田長親は非常に呑気な男だったが、民から「のぼう様(でくのぼう)」と呼ばれて親しまれていた。平和に暮らせたらなぁと呑気に考えていた長親だったが、ついに石田三成率いる大軍が忍城を攻めて来た…。

 

戦国時代の名勝負、忍城攻めを描いた作品で、映画版も大ヒットしました。本作は映画化する事を前提に書かれた、いわゆるノベライズ作品です。

 

それ故に非常にエンターテイメント性に優れた作品に仕上がっており、歴史小説と言うよりもライトノベルに近い作風になっています。

 

文章もキャラクターも軽いタッチで書かれており、戦国時代の知識が無くても読めるような仕上がりです。

 

話を引っ張っていくのが主人公である「のぼう様」の強烈な個性で、こののぼう様を好きになれるかどうかで小説の評価が変わってきます。

 

丹波などの周囲の人物も魅力的に描かれており、キャラクター小説としても楽しめます。
歴史小説初心者におすすめの作品ですが、歴史好きや歴史小説愛好家には不向きな作品です。

 

5)おすすめ歴史小説のまとめ

 

初心者におすすめの歴史小説をご紹介してきましたが、いかがでしたか?歴史小説を読もうと思うけど、何を読んだらいいか分からない!という方に是非一度手に取ってみてほしい作品ばかりです。

 

歴史小説も様々で、何を読めばいいか本当に困った時は「自分が好きな時代や国」を基準に選ぶのが、一番失敗しない探し方です。

 

例えば「自分は幕末の中でも新撰組が好きだ」と思ったなら、『燃えよ剣』や『壬生義士伝』を読んでみる…といった感じです。

 

好きな偉人や時代などをはっきりさせると、歴史小説は探しやすくなります。

 

日本史だと、戦国時代、江戸時代、幕末を舞台にした小説が非常に多いですね。

 

筆者は日本古代史の小説をあまり読んだことが無いので、色々と探してみたいと思っています。

 

ちなみに、歴史小説と時代小説の違いですが、「歴史小説は実在の人物を扱い、ほぼ史実通りに話が進む」「時代小説は舞台や人物は実在のものでも、フィクション寄り」となっています。

 

しかし、昔はきちんと線引きがされていたそうなのですが、現在はかなり曖昧になっているようですね。

 

執筆者 浅丸千代乃