寂しい生活を読んだ感想
著者の稲垣えみ子・・と聞いても正直、ピンと来ていない方も…。
「朝日新聞のあのアフロの女性」と聞けば「あ~!」となるのでは?
先日、とあるニュース番組に出ていらっしゃるところを拝見し、そのシルエットがあまりに衝撃的で一発で名前を覚えてしまいました。
そんな稲垣さん、ミニマリストとして有名です。
この本の内容も、私が見たテレビでのテーマも「ミニマリズム」について語ったもの。
ゆるりまいさんの家も何もなくて怖かったですが、稲垣さんの家には冷蔵庫も、テレビも、洗濯機もないんですよ。
ついには、ガスも止めてしまったと言うから驚きを禁じ得ないですね。
この生活、本当に寂しいと感じるかどうかは、その人次第です。
新垣さん自身はそうは思ってないですから。
読み物としては、大変興味深く面白いです。
何が面白いかと言うと、読書のいいところは、著者が体験してきたことを自分も疑似体験できることですよね?
例えば、夜、電気のない真っ暗な部屋に帰って、暗闇に目が慣れるまで待つ。
そうすると、部屋の中の景色がぼんやりと見えるようになる、自分も一緒になって体験してるようで楽しいです。
春夏秋冬の節電の努力、つい「私もやってみようかな?」なんて浅はかな思いさえ湧いて来ます。
断捨離する目的って、家が散らからず、掃除が楽で、生活を豊かすることが目的じゃないですか?
でもですね、電気を止めたらどうなるかというと、手間が増えるんですよ。
それに、エアコンがないから寒いも暑いもただただ受け入れるしかない。
ちなみに稲垣さんは、冬場は湯たんぽと火鉢を愛用しているそうです。
家電とは家事を楽にしてくれるものなので、要するに稲垣さんの日常は手間だらけ。私からすればかなり恐ろしい事態なのですが…。
そういう生き方の中で見つけたことが、この本には書かれています。
正直、憧れとはちょっと違うかな、と。
固定概念をぶっ飛ばした人生を歩んでいらっしゃる方のマインドについて触れることで、面白い勉強ができたなぁ、という感じです。
そんな生活が気持ちいい、「爽やか」だという新垣さん。
電気をやめようと思ったきっかけが、東日本大震災で起こった原発事故なんだそう。
その時、自分ができることは「節電」だと思い付き、いっちょやってみるかと挑戦したのでした。
はじめはちょっとした冒険のはずが、どんどん進化し、スーパーサイヤ人クラスまで登り詰めちゃったんですって。
1つ1つ電化製品を捨てるたびに得られる新しい感覚に感動し、やめられなくなってしまったそうです。
ちなみに稲垣さんはすでに退社されています。
そして、大仏さんのような、本当に見事なアフロヘアーですよ。
『寂しい生活』著者:稲垣えみ子
294ページ
3.本の内容
稲垣さん、朝日新聞を退社されていたのですね。この本はその後の自身の生活を綴ったエッセイです。記者をされていただけあって、とても読みやすく、私たち読者が何を知りたいかをきちんと心得てくれています。文章からして、聡明な方だと感じました。
「寂しい生活」という自虐タイトルが秀逸!読む前からわかることですが、実際は寂しくないですよ。
「寂しい生活を送る女性ですが、何か?」というような、一種の強さがにじんでいます。「シンプルライフ」とか「スローライフ」とかの、簡易なオシャレワードで片付けていないところも好感が持てました。
3.11の事態にショックを受けた稲垣さんは、それまでの生活を改める決心をします。それは電気に頼った生活を手放すこと。
確かに見習わなければいけないかもしれませんが、一般人にはなかなか厳しいです!同じように実践するにはかなりの忍耐が必要でしょう。
でも、始まった「寂しい生活」の中で稲垣さんが見つけたいろいろなことは、便利な環境に慣れ過ぎた自分にはハッとすることばかりでした。
「何かをなくすと見えてくるものがあった」という言葉は、まさに本書のメインテーマだと思います。家電や知り合いとの関係にお別れはできませんが…、新しい世界と出会うために、モノを少しずつ手放していくことは結構有効なのかもしれません。
ムダかそうじゃないか、役に立つかそうじゃないか。稲垣さんがそういった合理性だけを求める考え方から抜け出せたことは、私もしっかり学ぶべきことだと思います。
とりあえず、失うことを恐れてモノを増やすのはやめた方がいいですね。大切なこと、本当に必要なことともっと向き合いたいです。
寂しい生活購入前の注意点
極端なミニマリズムに抵抗感を持つ人は、この本を読んでも何も響かないでしょう。また、元・大手企業勤務で、金銭的に余裕があるであろう稲垣さんがこういった生活を送り、尤もらしいことを言ってることに違和感があるという人もいるかもしれません。