ピ-ス又吉『火花』

小説 - 小説 - 芥川賞受賞作品

私の感想

 

今を輝くお笑い芸人が書いた小説であること。芥川賞受賞作品であること。純文学であること。

これらの絶妙な相乗効果によって売り上げがすごいことになっちゃいましたね。

 

これまで累計発行部数は300万部、2016年の書籍売り上げは断トツの第一位です。

 

「芥川賞獲った芸人の小説、小難しくて気取っていてよくわからなくてつまらない」と思った方もいるんでしょうが、読書初心者の私が読んでも読みやすいと思ったし、やはり驚いたのは、お笑い芸人ピースの目立たない方の人(これまでは綾部の方がピンで露出多かったですし、漫才はほとんど見たことがなく)、という認識しかなかった人が、見識とかけ離れた才能を見せつけらたことが衝撃的だった・・というところでしょうか。

 

て芸人さんが書いた小説がここまで緻密で面白いとは!?ってところで、新鮮な気持ちで読めたのだと思いました。

 

その後、母にもすすめて本を貸し出したのですが、普段本など全く読まない母でさえ、「面白かった!」という感想が返ってきました。

 

そもそも純文学って芸術性が高いもので、一般的な面白さが問われるものではないと思うんですけど、お笑い芸人と純文学は共生できませんか?

 

確かに、作者が芸人なので、お笑いのことを描くのはある種のズルとも捉えられます。

でも、本質はそこではありません。

 

人間の真っ直ぐさ、ひたむきさ、それ故の不器用さ。

私にはひしひしと伝わってきました。

 

「火花」というタイトルも…、読後、それぞれの心に染み入るものがあるはずです。

この作品が作者から切り離されて評価されれば…、と感じています。

 

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『火花』著者:又吉直樹:180ページ

 

3.【本の内容】

 

“売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。第153回芥川賞受賞作。芥川賞受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」を収録。 ”(引用:Amazon.com)

 

火花のレビュー・評判

 

これまで芸人が書いた小説を読んだことがなく、話題になっているけど、いったいどんなことを書いているんだ?という気持ちで、ほとんど期待もせずに読みだしましたが、読みだしたら止まらないのですね。

 

思ったよりも好感が持てた、と言うのが大方の反応ではないでしょうか。

 

その理由として、まず、どのキャラクターにも人間味が感じられたからだと思います。この「人間を描く」というシンプルなテーマが、ズバリ純文学でした。

 

そして、文章や表現も含め、描き方がとても細かく丁寧であることも素晴らしかったです。

「盛り上がりに欠ける」という批判もあり、確かにその通りなんですけど、その淡々とした雰囲気が登場人物の日常を非常によく浮き立たせています。変に嘘くさいストーリーより断然、魅力的です!

 

また、作者が芸人ということで、お笑い芸人の素顔や本音が垣間見られるのも面白かったです。普段はふざけている芸人さん達が「笑い」というものとどう向き合っているのか、悩みや喜びを知ることができます。

 

ここに徹底したリアリティがあるのも、又吉さんの文才でしょう。時にぶつかり、時に認め合い…、そんな主人公の徳永と先輩・神谷のやり取りも、クスッと笑えてホロリと泣けました。何気ない会話が実は哲学的だったりして、結構深いのです。

 

結局、又吉さん自身がマジメなんだと思いますが、徳永も神谷も「笑い」に真正面から取り組んでいる姿が本当に印象的でした。徳永の不器用な感じ、プラス、神谷のぶっ飛んでる感じが絶妙です。

 

神谷は徳永に無理難題を押し付けたり、路上で突然訳のわからないことを叫び出したりと、本当にぶっ飛んでいます。その生き方はまさに破滅的で、最後の最後は、そこまでしたらアカンやろ?ってとこまでイっちゃってます。

 

読んだ人からは「お笑いの意識高い系」なんて言われていて、正直、一般人には神谷の笑いがなかなか理解できません…。

 

誰かモデルがいるのか、又吉さんの理想像なんですかね?ちょっとギャグセンス高めです。

 

最後に。芥川賞受賞とは言え、まだ粗削りな感じもあったので、次回作からどう変わっていくか注目したいと思います。

 

読む前に知っておくと良い点

 

この本が向かない人は、お笑いに興味がない、分からない人、娯楽小説に慣れてしまった人です。あと、必要以上に「お笑い芸人が書いた小説」という情報に囚われてしまっている人も楽しめないと思います。

 

【火花 ネタバレ】

 

・主人公は若手芸人の徳永。徳永は熱海で、売れない先輩芸人の神谷と出会う。徳永は神谷の才能に衝撃を受け、弟子入りを志願。すると神谷は見返りとして「自分の伝記を書いてほしい」と頼み、二人は行動を共にし始める。

 

・神谷は天才肌で、破天荒なタイプのお笑い芸人。その笑いは一般人にはあまり受け入れられず、先に売れ出したのは徳永のコンビ「スパークス」。

 

・一度は師匠と弟子という関係になった二人だが、やがてその距離が開いていくこととなる。

 

・徳永は相方の引退とコンビ解散。神谷は周りからの孤立、そして多額の借金による失踪という展開を迎える。

 

・結局徳永もお笑い芸人を辞め、サラリーマンになるが、しばらくして神谷と再会。しかし、久しぶりに会った神谷は衝撃的な姿になっていたのだった。

 

現在、2作目恋愛小説「劇場」も出版されていますが、なんとなくまだ読む気にはなていません。

 

又吉さんは火花を出す前にも数々面白い本を出しています。

お勧めなのは『第2図書係補佐』です。

これ、とっても面白いので個人的に押します!

 

体験談に思わず吹き出したり、心を打たれたり素の又吉さんのお人柄に触れることができますよ。

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