私の感想

 

この本は、読み終わった後に目を閉じてみてください。

深い緑の木々がザワザワと揺れ、そこから清々しい風が吹いて来る光景が映し出されるかも知れませんよ。

 

タイトルを見ただけでは、このようなイメージは想像もできないのです。

羊と鋼という全く異質な物で、どういう意味を持つのかが分からないですものね?

 

まず、小説書く人って、こういう発想なんだと感嘆してしまいました。

 

物語の中の「静けさ」がとても心地よかったのですが、ふいに「だから主人公の職業が調律師なのか!」と気付き、驚くと同時に深く感動してしまいました。

 

調律って、しんとした静けさの中でピアノや音と向き合いますよね?

タイトル、本に漂う空気感、作者のすばらしい筆致。これらの全てがうまく編み上がった作品でなければ、私達が「静けさ」に耳を澄ませることはできないと思うんです。

何気ない言葉でも心に響きました。

 

音が文字で表現される静かな世界で、人と人のつながり、人間のひたむきさが描かれる。ただただ、詩的で美しい小説です。

 

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羊と鋼の森 [ 宮下奈都 ]
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『羊と鋼の森』著者:宮下奈都 158ページ

 

本の内容

 

“★★2016年本屋大賞 大賞受賞作★★ゆるされている。世界と調和している。

それがどんなに素晴らしいことか。

言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。

 

「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」

 

ピアノの調律に魅せられた一人の青年。

彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。 ”(引用:Amazon.com)

 

 

『羊と鋼の森』のレビュー・評判

 

とにかく文章がキレイです。自然の景色、人々の心情、そしてピアノの音…。情景や目に見えないものを伝える言葉が、世の中にこんなにあったのかとため息が漏れるほどでした。

 

比喩もくどくなく、たまにはっとさせられる言葉も散りばめられていて、本当に「うっとり」という言葉がぴったりです。

 

自然豊かな北海道で生まれ育った青年・外村が新米調律師として様々な人と出会い、物語は進んでいきます。

 

この外村君が純朴で、ひたむきに調律という仕事と向き合う姿が非常に印象的です。出会う人々も温かくて、優しくて、彼らとのふれあいを通じて、主人公は少しずつ成長していきます。

 

ざっくりしたメインテーマはきっと、この外村君の成長物語だと感じました。

また、普段関わることのない調律師の仕事にふれることができたのも、面白い読書体験でした。

 

実は、私も小学校から中学になるまで、ピアノを習っていました。

1年に一回、調律の人に来てもらっていましたが、あれって、ピアノにとって大事なものだったってことも改めて知りましたが、調律師という。

 

あの時は何やってるのか理解していませんでしたから。

 

本職の方からはちょっと厳しいご意見もあるようですが、専門的でないことについてはそれほど気になりません。メインは主人公の成長なので…。

 

先にも述べたように、外村君のふるさとは自然豊かな場所で、この設定とタイトルの「森」という言葉に実はつながりがあるのだと思います。素敵でうまいタイトルだなと唸らされましたね。

 

この小説の静かな雰囲気と、主人公の真っ直ぐな感じが実にマッチしています。余計な雑音がない分、外村君の気持ちがすごく近くに感じられました。まるで映画を見ているような気分になる小説でした。

 

で、思った通り映画になるそうですけど、地味な映画になりそうですね^ ^;

 

 

この本を買う前に

 

クライマックスがはっきりしている小説を期待している人は物足りないかも?

スリリングな展開はないので、ゆったりしたリズムの本作は退屈に思えるかもしれません。

 

物語のキモとネタバレ

※購入する予定の人は、ここは読まない方が良いですよ。

 

・主人公の外村は高校生の頃、調律師という仕事に運命を感じる。専門学校に通ったのち、念願の調律師の仕事に就く。

・但し、外村少年はピアノを習っていたわけでも音楽に詳しかったわけでもない。あまり喋らない、おとなしい性格である。

・外村は調律師として修業を積む中で、先輩調律師たちや双子のピアニストと出会う。その人たちとのふれあいを通して、一歩一歩、外村は調律師としても人間としても成長していく。

・タイトルの「羊」は、ピアノの音を出すための羊毛のハンマーのこと。「鋼」は金属のワイヤーでできた弦のこと。

・外村が北海道の森の中で生まれ育ったことも、タイトルの「森」という部分につながっている。

・先輩調律師の秋野が、新米の外村を認めるセリフとして、タイトルの言葉が使われる。