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マスカレード・ホテルが木村拓哉主演で映画化されるって?

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マスカレード・ホテル映画化に向けてひとこと

 

東野ミステリーがまたもや映画化です。

まだまだ東野作品の勢いは弱まりませんね~。

主演は木村拓哉さん。

主人公・新田浩介は「若きエリート刑事」ということで、年齢設定が本の中では30代半ばとなっております。

 

なので、この「若き」の部分がちょっと引っかかります。

 

私は、この作品を読んだとき、もしマスカレード・ホテルがが映画化されたら、新田役は松坂桃李、あるいは小栗旬がいいかな?と勝手にイメージしていたので、キムタクがやると聞いて「ええー?それちょっとイメージちゃうやん?」と叫んでしまったです。

 

他のキャストがまだ発表になっていませんが、

木村拓哉がやると聞いて、稲垣一課長は松重豊さん(遠藤憲一さんでもいい)、能勢役は小日向さん、片桐瑶子は松たかこさんでやったら笑えるなと。

 

総支配人の藤木役は竹野内豊と堺雅人さんが浮かんだんですけど、佐藤浩市さんが警察か、ホテル側の上司役で出て来そうな気がする。

正直、もう見たくないな >佐藤浩市

 

上記は、あくまで私の思い描いたキャストです。早く決まるといいですね。

 

キムタクが刑事とホテルマンの2つの顔をどう見せてくれるのか、楽しみでもあります。

 

山岸直美役は長澤まさみさんです。まあまあ文句はないですが、

まず、この作品の世界にどっぷりと入り込んで満喫するには、とりあえずリアリティ云々をすっ飛ばして読み始めた方がいいです。

 

そもそもエリート刑事がホテルに潜入…という設定がまるっとフィクションですし、そこが問題ではありませんので。

 

しかし「なぜホテルのみが舞台?」という部分は最大限に生かされていると思います。

犯人も、犯人のターゲットもわからない…事件が起こる場所だけが判明しているという特殊な状況でのストーリー、コンパクトにまとまらず、結構ハラハラ・ドキドキできました。

 

さらに、ホテルのお客たちが、実に人間臭くてチャーミングなんです。

「誰がどう事件に関わっているのか…」読者側も気が抜けません。

ホテルならではの、人の流れ。

 

このキャラたちを軸とする人間関係が事件に絡んでいく様も実に緻密で、毎度のことながら東野先生に唸らされました。

伏線の回収っぷりも見事ですよ~。

ページ数はかなりありますが、サクサクと一気に読み進められます。

 

あとは、東野作品ファンにとっては「新コンビ誕生」がうれしいところでしょう。

若さで突っ走るエリート刑事・新田と、自分の仕事に誇りを持つホテルのプロ・フロントクロークの山岸。

少しずつ二人の信頼関係が築かれている様子も良かったです。

プラス、新田の成長や変わっていく姿も丁寧に描かれていて、好感が持てました。

 

新田の刑事とホテルマンという2つの顔、そして内容的にもミステリーとホテルものという2つの顔がある、読み応え満点な小説です。

 

展開がどちらかに偏ることもなく、バランスの良さに感服させられます。

ただし、ホテル業務に関してはかなり専門的。

 

よくぞここまで調べ切ったな、と東野先生の恐るべき取材力を見せつけられた感じです。

 

タイトルのマスカレード・ホテルの意味は?

 

舞台となるホテルの名前は「コルテシア東京」なのに、タイトルは「マスカレード・ホテル」…?

全編を通して、間違いなくキーになるのはこの「マスカレード=仮面舞踏会」の「仮面」。

自身でも推理を重ねながらページをめくっていくと、どんどんと作品の深みにハマッていくでしょう。

 

2.『マスカレード・ホテル』著者:東野圭吾

520ページ

3.本の内容

 

『マスカレード・ホテル』
都内で起きた不可解な連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明。残された暗号から判明したのは、次の犯行場所が一流ホテル・コルテシア東京ということのみ。若き刑事・新田浩介は、ホテルマンに化けて潜入捜査に就くことを命じられる。彼を教育するのは、女性フロントクラークの山岸尚美。次から次へと怪しげな客たちが訪れる中、二人は真相に辿り着けるのか!? 大人気シリーズ第1弾のミリオンセラー。/登場人物紹介/山岸尚美ホテル・コルテシアのフロントクローク。人の役に立ちたいと思い、昔からホテルで働くことを夢見ていた。徹底したプロ意識を持っており、努力を惜しまない。並外れた観察力と記憶力でお客様をもてなし、お客様の“仮面”を守ることを信念としている。/新田浩介警視庁捜査一課所属の若きエリート刑事。国際弁護士の息子で、十代の前半の二年あまりをロサンゼルスで過ごす。知能犯との対決を夢見てこの世界に入った。生意気なところがあり、先輩刑事と衝突することも。大胆な発想力と行動力で事件解決に貢献する。(引用:Amazon.com)

 

4.『マスカレード・ホテル購入前の注意点』

 

「設定は安直、トリックは無理やり」という印象です。スリル満点のミステリーというよりは、ドタバタ群像劇?ホテルのお客のアレコレという感じは、ちょっと期待外れでした。それほど珍しくもないホテルものだったせいで新鮮味に欠けていたのも残念。読みやすさ重視なのか、持ち味の重厚さもあまりなかったような…。このライトさ、最近の東野作品の傾向なのでしょうか?

 

以下↓ネタバレがありますので原作を読んでない方は注意してください

 

5.物語のキモ・ネタバレ

※結末を知りたくない人は読まないで※

 

・都内で3件続いている連続殺人事件。次の犯行現場は高級ホテル「コルテシア東京」とわかった。

・ホテルマンに扮して「コルテシア東京」へ潜入捜査に入る、若手エリート刑事・新田。その指導と補助の役割を任されたのはフロントクローク・山岸。

・初めは捜査のことばかり考えてホテルマンとしての仕事をしっかりしなかった新田だが、山岸の熱心な新人教育や仕事への情熱に心を打たれ、次第に変わっていく。

・そんな中、ホテルには面倒な客が次々と訪れる。客たちと接しながら、ホテルの関係者にも目を光らせつつ推理していく新田。

・所轄の品川警察署の刑事・能勢も新田のサポートにつく。

・やがて過去の3つの事件を紐解いていくと、それぞれの事件の容疑者はバラバラで、闇サイトで知り合っただけの人物たちということがわかった。

・それを取りまとめていたのが「X4」という人物で、このX4がコルテシア東京で事件を起こそうとしていることを突き止める。

・ここで捜査は行き詰るが、週末に予定されているとある結婚式に注目が集まる。この結婚式に関する不審な電話がかかってきたため。

・しかし新田はホテルの仕事を続けるように指示され、捜査からは外された。

・そして新田がうっかり口を滑らせたことにより、捜査や事件について知る山岸。ホテルの大事な客を囮にすることはできないと反発するが、新田に説得され、捜査の計画が進められている週末の結婚式が終わるのを待つことに。

・新田はふと、予告されている事件はカモフラージュなのでは?と気付く。能勢にも協力してもらい、真犯人に近付いていく新田。

・式の前日に届けられたワイン、能勢が見つけてきた未解決の殺人事件、その被害者・松岡に関する情報。それらを推理した結果、盲人のふりをしていたホテルの客「片桐瑶子」という人物にたどり着いた。

・しかし、時すでに遅し。片桐瑶子という老婆を演じていた、真犯人であるX4=長倉麻貴によって山岸に危険が迫っていた。長倉のターゲットは山岸だったのだ。

・犯行理由は1年前のホテルでのトラブルの逆恨みとも言えるもの。新田は長倉と山岸の行方を追いかける。

映画『ナミヤ雑貨店の奇跡』山田涼介の成長ぶりに心ときめく

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映画『ナミヤ雑貨店の奇跡』感想

 

テレビのドラマや映画では観たことあるけど、小説自体はまだ読んだことはないんです。この度映画を観たので原作も読んでみたいと思いました。

 

“東野作品史上、もっとも泣ける感動ミステリー”

こんなキャッチフレーズがついているので、ずっとずっと気になっていた小説ではあったのだけど、ミステリー小説と「感動」と「涙」という言葉がなかなか結びつかなかったかったんですね。

 

映画を観た感想は・・ミステリーじゃなくて、ファンタジーですよね。

そして敦也役を演じた山田涼介くん(Hey! Say! JUMP)がカッコイイ。

映画では『暗殺教室』の実写版でもお顔は拝見しております。

 

少し前までは、カワイイだけのアイドルかと思っていたら、予想外に成長していて、いい役者さんになりましたねえ!オバサンもびっくりです。

 

私が持ってる山田君のイメージは、スイーツ好きの今ドキ男子という印象が強く、今回の悪ぶった役とのギャップで少なからず驚かされました。

 

どっちが素と近いんだろう?とか、そんなことがむちゃくちゃ気になりました。

 

俳優としての山田涼介については、映画界の大御所・西田敏行さんに「ジェームズ・ディーンの出現に近いものを感じる」と言わしめたのだから本物です。

 

とにかく、初めから最後まで見惚れちゃいましたね(笑)

 

肝心の物語の方はどうなんだ?というと、色々な人の思いや切なさ、優しさがじわじわ~と心に沁み入り、『東野作品史上、もっとも泣ける感動ミステリー』のキャッチに偽りはないでしょう。

 

ナミヤ雑貨店の奇跡東野圭吾パンフレット

 

またlineやメールではなく、手紙が持つ本来の役割をも、そっと現代人に伝えてくれてるような気がします。

 

心を打つ手紙を扱った作品と言えば、小川糸さんの『ツバキ文具店』を思い出します。

あの小説もやはり、手書きの【手紙】です。タイムスリップはしませんが、何かが降りて来ます(笑)

 

この辺りの意味するところは、やはりスマホやSNSへ対する何かですかねえ?

 

さて、映画ナミヤ雑貨店は、いきなり3人の強盗シーンから始まって、雑貨店に着いたらシャッターの向こう側は昭和の時代に逆戻りしていて、そこから何人かと手紙のやりとりが始まるのですが、魚屋ミュージシャンあたりまでの話は、ちょっと退屈だったんですね。

 

それが後半、“迷える子犬”のストーリーに入ったところからぐぐぐ~っと核心に迫って来て、映画館に居ながら前のめりになっていました。

 

携帯電話のない昭和の時代から平成までを駆け足で遡っていく展開なので、この時代を生きて来た私の世代は、「そうそう、あの頃はね」なんて重ねて観てた方も居たでしょう。

 

バブルがはじける時期を知っていたら、私も今頃は子犬さんのように大成功したかも知れないのになとか、意味のない想像をしたりもしました。

 

でも、この物語に登場する人たちは、己の利益よりも、大事な人のために奔走したり、命を落としたり、また自分の信念を貫き通すような強い意志を持った人ばかり。

 

ですが、迷いや葛藤がなかったわけではなく、心が折れそうになった時、ナミヤ雑貨店へ出した手紙がきっかけで、本当の自分の心の声に気づき、決意を固めていく、そんな描写が観客の心を打ちます。

 

それが、LINEではなく『手紙』でのやりとりであるからこそ、年代により懐かしく、また新しい感動があったかも知れません。

 

はじめはただのコソ泥かと思われた敦也、翔太、幸平の3人組。

しかし、この3人の生い立ちやナミヤ雑貨店の背景が徐々に明らかになり、やっと1つに繋がるわけですが、この辺りの謎解き、キャラクター其々が抱える過去、心の揺れを実に巧妙に描いていると思います。

 

ネタバレになってしまいますが、空き巣に入った晴美さんの家に向かっていった3人は逮捕されてしまったのかな?と心配になりました。

 

でも、エンドロールでは敦也は医者?か介護士のお仕事をしていたので、晴美が被害届を出さなかったのかな?と推測しますが、また小説の方を読んでみようと思います。

 

小説を読んでから映画を観るか、映画を観てから小説を読むか、をいつも迷うのですけど、『ナミヤ雑貨店の奇跡』に関してはイメージを極端に遜色することはないだろうと思いました。

 

とても良い映画ですよ。

犬神家の一族

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■この本を読むことになったきっかけ

 

かつて少年マガジンで連載していた『金田一少年の事件簿』という漫画にのめり込んで、この作品を読み始めました。

 

なぜかと言うと、『金田一少年の事件簿』の主人公、金田一一(はじめ)は、連載当初は金田一耕助の孫という設定があり、作中でも「名探偵と呼ばれた金田一耕助(じっちゃん)の名にかけて」という台詞をよく言っていたので、金田一耕助ってどこかで聞いた事があるけどなんだろう?と思い、横溝正史作品をいくつか読み始めました。

 

(※金田一耕助の孫という設定は、横溝正史の遺族からの訴えにより、途中からあまり出さなくなりました)

 

■本のあらすじ

 

昭和20年代。犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛が他界しました。

残された遺族へ、遺産の分配や事業をどうしていくのかを書いた遺言状が用意されていましたが、これの公開は佐兵衛の長女松子の息子、佐清(すけきよ)が復員してきてから読み上げることになりました。

 

同じ年の10月。探偵の金田一耕助の元に若林豊一郎という男から「犬神家で不吉な事が起きそうだから、調べて欲しい」と依頼が来ます。

 

気になった金田一は犬神家の本拠地である那須湖畔へと赴きます。ホテルから湖を眺めていると、野々宮珠世が遊んでいたボートが沈没しかけているのを目撃し、犬神家の下男の猿蔵とともに彼女を救出します。

 

ボートには何者かによって穴が開けられており、二人の話だと他にも様々な罠が珠世に仕掛けられていたようです。

 

その後、二人と別れてホテルに戻ると金田一を訪ねて来ていた若林豊一郎が毒殺されていました。金田一は若林が働いていた弁護士事務所の古舘弁護士と会い、犬神家についての話をします。

 

犬神家顧問弁護士でもある古舘弁護士は、後日おこなわれる遺言状の公開に立ち会うことを許可してくれました。

 

ビルマから佐清が復員し、遺言状が読み上げられることになりました。しかし帰って来た佐清は顔にひどい火傷をしており、白いゴム製のマスクをすっぽりかぶっている異様な姿をしていたので、本当に彼が佐清なのかと全員が疑念を抱きました。

 

肝心の遺言は『珠世に家宝の斧(よき)、琴(こと)、菊(きく)と遺産を与える。珠世は佐智(すけとも)、佐武(すけたけ)、佐清の中の誰かと結婚すること』というとんでもないものでした。

 

3人の息子たちは遺産のため珠世をものにしようと画策します。そんな中、猿蔵の世話する菊人形の首が落とされ、代わりに佐武の生首が飾られているという殺人事件が発生します。

 

佐智も琴糸を首に巻き付けられ死亡し、佐清も凍った湖に逆さまに投げ込まれ殺されます。それぞれが斧、琴、菊に見立てられた殺人でした。

 

やがて金田一は珠世が佐兵衛の孫娘であると知り、事件の犯人も佐兵衛の長女にして佐清の母、松子であると発覚します。

 

そして、湖に投げ込まれ殺された佐清は本物の佐清ではなく、佐兵衛の隠し子の青沼静馬であると分かります。本物の佐清が現れて、静馬に脅迫されて入れ替わっていたことや、母の犯した殺人の処理をしていたことなどを告白します。

 

息子だと思っていた人物(静馬)から「俺はお前の息子なんかじゃない」と言われ、そのショックで殺害してしまった松子は、佐清が生きていたことを喜び、毒煙草を飲んで自殺してしまいました。

 

■読んだ感想

 

大富豪の遺言が引き金に起こる惨劇というのは、昔からよくあるものですが「斧(よき)、琴(こと)、菊(きく)」に見立てた猟奇的な殺人劇というのが、物語の不気味さと陰湿さを際立させています。

 

見立て殺人物というと『そして誰もいなくなった』が有名ですが、本作の見立て殺人は日本的なおどろおどろしい雰囲気を持っています。それが序盤から最後の一ページまで続くもんですから、とにかく濃厚です。

 

『犬神家の一族』はミステリ作品ですので、殺人劇のトリックがどんなものか、犯人は誰なのかを予想したりしながら楽しむという読み方も良いのですが、私の個人的なおすすめポイントは、殺人そのものの背景です。

 

なぜ事件が起きたのか、過去の因縁は何なのか…などなど、コールタールのようなドロッドロの人間ドラマが横溝正史作品最大の魅力だと思います。

 

「集落の因習」「何十年にも渡る因縁」「複雑な家系図」「愛憎絡み合う骨肉の争い」といった設定が『犬神家の一族』に限らずよく登場しますが、それをひっくるめて『横溝系ミステリ』『横溝正史風ミステリ』などと呼ばれる事もあります。近年だとそれに当たるのが、三津田信三氏のミステリ作品です。

 

 

最近のミステリ小説は人が死なないライトなものや、人間関係などを複雑にしすぎない知的なゲームとして謎解きを楽しむものなど多様化しています。

 

そのようなサラッとしたものも面白いのですが、たまには『犬神家の一族』のような腹の底にズシンと来る、読むだけで胸焼けしそうな濃い背景を描くミステリも良いのではないでしょうか。

 

■本を読んでいて自分が初めて知ったモノ、場所、言葉など

 

『犬神家の一族』は何度も映像化されています。映画が3回、ドラマが5回。金田一耕助シリーズは人気があるので、定期的にドラマなど放送されますが、本作は特に多いです。金田一耕助=犬神家の一族と思っている人も中にはいるかもしれません。

さて。物語で欠かす事の出来ない主人公の名探偵、金田一耕助ですが、多くの俳優が演じてきています。

『犬神家の一族』に限って言うと……

片岡千恵蔵
石坂浩二
古谷一行
中井貴一
片岡鶴太郎
稲垣吾郎

……以上の俳優が演じてきました。誰もが聞いた事のある有名俳優ばかりですね。世代によっても異なりますが、古谷一行さんの金田一耕助がファンの中では人気なようです。
ちなみに、『犬神家の一族』以外の作品で金田一耕助を演じた俳優さんは……

高倉健
渥美清
中尾彬
役所広司
豊川悦治
上川隆也
長谷川博己
(他多数)

……と、こちらもかなり豪華。高倉健さんの金田一耕助はオープンカーに乗っていたり、中尾彬さんに限ってはファッションがなぜかヒッピー風とかなり迷走していたようです。

私が一番好きな金田一耕助は、映画『八つ墓村』で豊川悦司さんが演じた金田一耕助です。

 

クールでニヒルでセクシーなトヨエツが、金田一役でベラベラしゃべってるというのが、不思議な感じがして癖になります。

 

個人的な趣味ですが、斎藤工さんか山田孝之さんの金田一耕助が見てみたいです。どちらも美形ですので、もっと小汚くなって頂かなくてはなりませんが……。

 

■本の中で気になった言葉、セリフ 1シーン

横溝正史作品には必ず魅力的なヒロインが登場します。『犬神家の一族』では野々宮珠世がヒロインになっていますが、彼女の美しさの描写が読むたびに気になってしまいます。

 

「この世のものとは思えなかった」
「美人もここまでくるとかえって恐ろしい。戦慄的である」
「眼近に見る珠世の美しさはいよいよ尋常ではなかった」
「あまりの美しさを怖いと思った」

 

一応序盤に、珠世がどんな風貌をしているのか簡単な描写はありますが、基本的にこんな感じです。

小説において、美醜の描写というのは難しいものですが、ただ単純に「美しい」「醜い」「美少女」などを連発すると興醒めしてしまうことがあります。

 

しかし不思議なことに、横溝正史の作品いおいてはこのような書かれ方をしても、嫌な気がしないのです。

 

「あなたがこの世で一番美しいと思う人を想像してみて。その人よりも美人だから!」というような回りくどくない、勢いのようなものがあるからかもしれません。

 

『十角館の殺人』綾辻行人~変な館が舞台

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■この本を読むことになったきっかけ

 

ミステリが読みたくてしょうがなかった頃、何を読めば良いか分からず「とりあえず、なんとかの殺人とか、何々殺人事件ってタイトルのものを読もう」と思って手に取った作品のうちの一つです。

 

同時期に読んだもので『オリエント急行の殺人』があります。

 

特にこの作品に惹かれたのは、「変な館が舞台」というところです。

 

ミステリはある程度のリアリティも大事ですが、娯楽小説でもあるので現実では有り得ない設定も大事だと思っています。

 

この「変な館が舞台」という設定は、なんともミステリらしい有り得なさで、私の興味をそそりました。

 

■本のあらすじ

 

九州の某所に位置する角島。そこには風変わりな建築家、中村青司が建てた十角館という奇妙な館が建っていました。

 

かつては青屋敷という建物もありましたが、半年前に中村青司の妻は左手首を切り落とされた上に絞殺、使用人夫婦が殺害され、青司も焼死体で発見されるという四重殺人事件が起きて全焼してしまい、今は十角館だけが取り残されているのです。

 

当時働いていた庭師の行方は未だ不明で、四重殺人の犯人は庭師ではないかと警察は睨んでいました。

そんな中、ある大学のミステリ研究会のエラリイ、ポウ、ヴァン、ルルウ、カー、アガサ、オルツィは奇妙な事件が起きた角島に興味を持ち、旅行気分で角島に上陸しました。

一方、本土にいる元ミステリ研究会の江南(かわみなみ)のところに『中村千織は殺された』という告発文めいた手紙が届きます。

 

差出人は半年前に死んだはずの中村青司。そして中村千織とは、かつて所属していたミステリ研究会の飲み会で、急性アルコール中毒になって死んでしまった青司の娘でした。

 

突然の手紙を不審に思い、中村青司の弟にあたる中村紅次郎に話を聞きに行きます。そこで島田潔という男と出会い、手紙が誰に届いているのかを、同級生の守須(もりす)恭一の助けも借りながら調査し、過去の四重殺人そのものを探るようになります。

 

本土で四重殺人の真相が調査されている時、島では「第一被害者」「第二被害者」などと書かれた人数分のプレートが発見され、翌朝にはオルツィが絞殺死体となって発見されました。

 

部屋のドアには「第一被害者」のプレートが貼り付けられ、彼女の左手首は切断されていました。

その後、カーがコーヒーに含まれた薬物によって毒殺されます。疑心暗鬼になりながらも推理を重ね、外部からの犯行で中村青司は生きているのではないかという疑いを持ち始めます。

 

島での惨劇を知らない島田と江南は、過去の事件は「千織は青司の娘ではなく、紅次郎の娘だった。青司は妻を愛するあまり嫉妬に狂い無理心中をした」というのが真相であると結論付けた。

 

当初、島田たちも中村青司は生きていて焼死体は庭師のものだと疑っていたが、実際は中村青司が自ら灯油をかぶり火をつけたというものでした。

 

そして島ではついにルルウとアガサ、ポウが殺害されます。残ったエラリイとヴァンは館の中に隠し部屋などがあるかもしれないと、くまなく探します。予想は的中し、館の中に隠し部屋を見つけました。

 

そこには、かなりの年月が経った死体がひとつ転がっていたのです。

 

翌日、守須のところに島の所有者である親戚から電話がきます。
「島に行った“大学生6名全員”が死体で発見された」と……。

 

■感想

 

日本のミステリに新たなブームを巻き起こした、ミステリ界に衝撃を走らせた作品です。

本作は『そして誰もいなくなった』をかなり意識した作品になっており、所謂クローズドサークル物です。

 

しかしそれだけでなく、角島の大学生らの事件と、本土で島田たちが探っている過去の四重殺人事件が密接に絡み合い、それが最後に一つにまとまるという、なんとも美しい話のまとまり方をしています。

 

ミステリではほぼ御法度とも言える、建物に仕掛けられたカラクリもなんの違和感もなく受け入れられる話運びになっています。

 

さて、本作は文章で読者を騙す叙述トリックという手法を用いています。私はこれまで、それなりにミステリを読んできて叙述トリックを使った作品も色々と読んできましたが、『十角館の殺人』の叙述トリックが一番震えました。たった一行でこんなに体中がゾクっとするとは思いませんでした。

 

それだけ犯人に意外性があり、面白いどんでん返しになっています。

 

この一行の破壊力をさらに際立たせているのが、新装改訂版です。ページをめくると例の一行が出て来るように文章量を調整してあるので、ページをめくった後に衝撃を受ける事になります。心憎い演出ですね。

 

とても衝撃的で面白い作品なのですが、綾辻氏のデビュー作という事もあり、全体的に粗い印象があります。強いて挙げるとすれば「犯人の動機が弱い」という点です。

 

犯人と中村千織との関係が後半になり唐突に語られ、しかもそれが逆恨みっぽいというのが、ちょっと気になりました。

 

作中の重要人物である中村青司は、『十角館の殺人』から始まる『館シリーズ』すべてに関わっています。彼について詳しく知りたい方は是非『暗黒館の殺人』を読んでみてください。

 

かなり長い作品ですが、中村青司が何者かが分かる重要な作品になっています。

 

■本を読んでいて自分が初めて知ったモノ、場所、言葉など

 

角島に渡ったミステリ研究会の7名は、それぞれ海外の有名ミステリ作家の名前をあだ名にしています。名前の元ネタと代表作をちょっとだけ調べてみました。

・エラリィ(エラリー・クイーン)

代表作『ローマ帽子の謎』『Xの悲劇』等

・カー(ジョン・ディクスン・カー/カーター・ディクスン)

代表作『三つの棺』『緑のカプセルの謎』等

・ポウ(エドガー・アラン・ポー)

代表作『モルグ街の殺人』『早すぎた埋葬』等

・ルルウ(ガストン・ルルー)

代表作『黄色い部屋の秘密』『オペラ座の怪人』等

・アガサ(アガサ・クリスティ)

代表作『そして誰もいなくなった』『オリエント急行の殺人』等

・オルツィ(バロネス・オルツィ)

代表作『紅はこべ』『隅の老人』

・ヴァン(S・S・ヴァン・ダイン)

代表作『グリーン家殺人事件』『僧正殺人事件』等

 

いずれの作家も、ミステリや幻想小説の先駆者たちです。海外ミステリも読んでみたいなと思った方は、この中のどれかをまず読んでみる事をおすすめします。

 

■本の中で気になった言葉、セリフ 1シーン

 

『十角館の殺人』に限らず、綾辻行人氏の小説全般に言える事なのですが、登場人物の喫煙者率が非常に高いです。

 

セブンスターやセーラムといった、今の若者が吸わないような銘柄がバンバン出てきます。作中では煙草が凶器に使われているシーンもあり、ただのアイテムではなくミステリらしい演出に一役買っています。

 

読んでみると、登場人物のほぼ全員が喫煙者だったような気がします。探偵役の島田潔にいたっては、元ヘビースモーカーで体を悪くして以来一日に一本だけという謎のこだわりを見せています。

 

ここまで「煙草を吸う」という事にこだわっている小説は、現在に至るまであまり見た事がありません。もしかしたら綾辻氏自身が愛煙家で、煙草に並々ならぬこだわりを持っているのかもしれませんね。

 

煙草を吸うタイミングや、煙草の吸い方などがとても細かく描写されており、良い意味でマニアックさを感じます。普段煙草を嗜まない人でも、読んでいると吸いたくなってしまう……そんな魔力があります。

 

しかし、登場人物のほとんどが大学生……なのに煙草は吸うわ酒はよく飲むわと、今と比べると時代を感じます。本作が世に出たのが1987年ですので、その当時は今ほど喫煙に対する風当たりは強くなかったのでしょうね。

 

煙草は犯人が誰かというヒントでもあります。気になる方は注意して読んでみてください。

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