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映画『ナミヤ雑貨店の奇跡』山田涼介の成長ぶりに心ときめく

映画『ナミヤ雑貨店の奇跡』山田涼介の成長ぶりに心ときめく

映画『ナミヤ雑貨店の奇跡』感想

 

テレビのドラマや映画では観たことあるけど、小説自体はまだ読んだことはないんです。この度映画を観たので原作も読んでみたいと思いました。

 

“東野作品史上、もっとも泣ける感動ミステリー”

こんなキャッチフレーズがついているので、ずっとずっと気になっていた小説ではあったのだけど、ミステリー小説と「感動」と「涙」という言葉がなかなか結びつかなかったかったんですね。

 

映画を観た感想は・・ミステリーじゃなくて、ファンタジーですよね。

そして敦也役を演じた山田涼介くん(Hey! Say! JUMP)がカッコイイ。

映画では『暗殺教室』の実写版でもお顔は拝見しております。

 

少し前までは、カワイイだけのアイドルかと思っていたら、予想外に成長していて、いい役者さんになりましたねえ!オバサンもびっくりです。

 

私が持ってる山田君のイメージは、スイーツ好きの今ドキ男子という印象が強く、今回の悪ぶった役とのギャップで少なからず驚かされました。

 

どっちが素と近いんだろう?とか、そんなことがむちゃくちゃ気になりました。

 

俳優としての山田涼介については、映画界の大御所・西田敏行さんに「ジェームズ・ディーンの出現に近いものを感じる」と言わしめたのだから本物です。

 

とにかく、初めから最後まで見惚れちゃいましたね(笑)

 

肝心の物語の方はどうなんだ?というと、色々な人の思いや切なさ、優しさがじわじわ~と心に沁み入り、『東野作品史上、もっとも泣ける感動ミステリー』のキャッチに偽りはないでしょう。

 

ナミヤ雑貨店の奇跡東野圭吾パンフレット

 

またlineやメールではなく、手紙が持つ本来の役割をも、そっと現代人に伝えてくれてるような気がします。

 

心を打つ手紙を扱った作品と言えば、小川糸さんの『ツバキ文具店』を思い出します。

あの小説もやはり、手書きの【手紙】です。タイムスリップはしませんが、何かが降りて来ます(笑)

 

この辺りの意味するところは、やはりスマホやSNSへ対する何かですかねえ?

 

さて、映画ナミヤ雑貨店は、いきなり3人の強盗シーンから始まって、雑貨店に着いたらシャッターの向こう側は昭和の時代に逆戻りしていて、そこから何人かと手紙のやりとりが始まるのですが、魚屋ミュージシャンあたりまでの話は、ちょっと退屈だったんですね。

 

それが後半、“迷える子犬”のストーリーに入ったところからぐぐぐ~っと核心に迫って来て、映画館に居ながら前のめりになっていました。

 

携帯電話のない昭和の時代から平成までを駆け足で遡っていく展開なので、この時代を生きて来た私の世代は、「そうそう、あの頃はね」なんて重ねて観てた方も居たでしょう。

 

バブルがはじける時期を知っていたら、私も今頃は子犬さんのように大成功したかも知れないのになとか、意味のない想像をしたりもしました。

 

でも、この物語に登場する人たちは、己の利益よりも、大事な人のために奔走したり、命を落としたり、また自分の信念を貫き通すような強い意志を持った人ばかり。

 

ですが、迷いや葛藤がなかったわけではなく、心が折れそうになった時、ナミヤ雑貨店へ出した手紙がきっかけで、本当の自分の心の声に気づき、決意を固めていく、そんな描写が観客の心を打ちます。

 

それが、LINEではなく『手紙』でのやりとりであるからこそ、年代により懐かしく、また新しい感動があったかも知れません。

 

はじめはただのコソ泥かと思われた敦也、翔太、幸平の3人組。

しかし、この3人の生い立ちやナミヤ雑貨店の背景が徐々に明らかになり、やっと1つに繋がるわけですが、この辺りの謎解き、キャラクター其々が抱える過去、心の揺れを実に巧妙に描いていると思います。

 

ネタバレになってしまいますが、空き巣に入った晴美さんの家に向かっていった3人は逮捕されてしまったのかな?と心配になりました。

 

でも、エンドロールでは敦也は医者?か介護士のお仕事をしていたので、晴美が被害届を出さなかったのかな?と推測しますが、また小説の方を読んでみようと思います。

 

小説を読んでから映画を観るか、映画を観てから小説を読むか、をいつも迷うのですけど、『ナミヤ雑貨店の奇跡』に関してはイメージを極端に遜色することはないだろうと思いました。

 

とても良い映画ですよ。

犬神家の一族

■この本を読むことになったきっかけ

 

かつて少年マガジンで連載していた『金田一少年の事件簿』という漫画にのめり込んで、この作品を読み始めました。

 

なぜかと言うと、『金田一少年の事件簿』の主人公、金田一一(はじめ)は、連載当初は金田一耕助の孫という設定があり、作中でも「名探偵と呼ばれた金田一耕助(じっちゃん)の名にかけて」という台詞をよく言っていたので、金田一耕助ってどこかで聞いた事があるけどなんだろう?と思い、横溝正史作品をいくつか読み始めました。

 

(※金田一耕助の孫という設定は、横溝正史の遺族からの訴えにより、途中からあまり出さなくなりました)

 

■本のあらすじ

 

昭和20年代。犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛が他界しました。

残された遺族へ、遺産の分配や事業をどうしていくのかを書いた遺言状が用意されていましたが、これの公開は佐兵衛の長女松子の息子、佐清(すけきよ)が復員してきてから読み上げることになりました。

 

同じ年の10月。探偵の金田一耕助の元に若林豊一郎という男から「犬神家で不吉な事が起きそうだから、調べて欲しい」と依頼が来ます。

 

気になった金田一は犬神家の本拠地である那須湖畔へと赴きます。ホテルから湖を眺めていると、野々宮珠世が遊んでいたボートが沈没しかけているのを目撃し、犬神家の下男の猿蔵とともに彼女を救出します。

 

ボートには何者かによって穴が開けられており、二人の話だと他にも様々な罠が珠世に仕掛けられていたようです。

 

その後、二人と別れてホテルに戻ると金田一を訪ねて来ていた若林豊一郎が毒殺されていました。金田一は若林が働いていた弁護士事務所の古舘弁護士と会い、犬神家についての話をします。

 

犬神家顧問弁護士でもある古舘弁護士は、後日おこなわれる遺言状の公開に立ち会うことを許可してくれました。

 

ビルマから佐清が復員し、遺言状が読み上げられることになりました。しかし帰って来た佐清は顔にひどい火傷をしており、白いゴム製のマスクをすっぽりかぶっている異様な姿をしていたので、本当に彼が佐清なのかと全員が疑念を抱きました。

 

肝心の遺言は『珠世に家宝の斧(よき)、琴(こと)、菊(きく)と遺産を与える。珠世は佐智(すけとも)、佐武(すけたけ)、佐清の中の誰かと結婚すること』というとんでもないものでした。

 

3人の息子たちは遺産のため珠世をものにしようと画策します。そんな中、猿蔵の世話する菊人形の首が落とされ、代わりに佐武の生首が飾られているという殺人事件が発生します。

 

佐智も琴糸を首に巻き付けられ死亡し、佐清も凍った湖に逆さまに投げ込まれ殺されます。それぞれが斧、琴、菊に見立てられた殺人でした。

 

やがて金田一は珠世が佐兵衛の孫娘であると知り、事件の犯人も佐兵衛の長女にして佐清の母、松子であると発覚します。

 

そして、湖に投げ込まれ殺された佐清は本物の佐清ではなく、佐兵衛の隠し子の青沼静馬であると分かります。本物の佐清が現れて、静馬に脅迫されて入れ替わっていたことや、母の犯した殺人の処理をしていたことなどを告白します。

 

息子だと思っていた人物(静馬)から「俺はお前の息子なんかじゃない」と言われ、そのショックで殺害してしまった松子は、佐清が生きていたことを喜び、毒煙草を飲んで自殺してしまいました。

 

■読んだ感想

 

大富豪の遺言が引き金に起こる惨劇というのは、昔からよくあるものですが「斧(よき)、琴(こと)、菊(きく)」に見立てた猟奇的な殺人劇というのが、物語の不気味さと陰湿さを際立させています。

 

見立て殺人物というと『そして誰もいなくなった』が有名ですが、本作の見立て殺人は日本的なおどろおどろしい雰囲気を持っています。それが序盤から最後の一ページまで続くもんですから、とにかく濃厚です。

 

『犬神家の一族』はミステリ作品ですので、殺人劇のトリックがどんなものか、犯人は誰なのかを予想したりしながら楽しむという読み方も良いのですが、私の個人的なおすすめポイントは、殺人そのものの背景です。

 

なぜ事件が起きたのか、過去の因縁は何なのか…などなど、コールタールのようなドロッドロの人間ドラマが横溝正史作品最大の魅力だと思います。

 

「集落の因習」「何十年にも渡る因縁」「複雑な家系図」「愛憎絡み合う骨肉の争い」といった設定が『犬神家の一族』に限らずよく登場しますが、それをひっくるめて『横溝系ミステリ』『横溝正史風ミステリ』などと呼ばれる事もあります。近年だとそれに当たるのが、三津田信三氏のミステリ作品です。

 

 

最近のミステリ小説は人が死なないライトなものや、人間関係などを複雑にしすぎない知的なゲームとして謎解きを楽しむものなど多様化しています。

 

そのようなサラッとしたものも面白いのですが、たまには『犬神家の一族』のような腹の底にズシンと来る、読むだけで胸焼けしそうな濃い背景を描くミステリも良いのではないでしょうか。

 

■本を読んでいて自分が初めて知ったモノ、場所、言葉など

 

『犬神家の一族』は何度も映像化されています。映画が3回、ドラマが5回。金田一耕助シリーズは人気があるので、定期的にドラマなど放送されますが、本作は特に多いです。金田一耕助=犬神家の一族と思っている人も中にはいるかもしれません。

さて。物語で欠かす事の出来ない主人公の名探偵、金田一耕助ですが、多くの俳優が演じてきています。

『犬神家の一族』に限って言うと……

片岡千恵蔵
石坂浩二
古谷一行
中井貴一
片岡鶴太郎
稲垣吾郎

……以上の俳優が演じてきました。誰もが聞いた事のある有名俳優ばかりですね。世代によっても異なりますが、古谷一行さんの金田一耕助がファンの中では人気なようです。
ちなみに、『犬神家の一族』以外の作品で金田一耕助を演じた俳優さんは……

高倉健
渥美清
中尾彬
役所広司
豊川悦治
上川隆也
長谷川博己
(他多数)

……と、こちらもかなり豪華。高倉健さんの金田一耕助はオープンカーに乗っていたり、中尾彬さんに限ってはファッションがなぜかヒッピー風とかなり迷走していたようです。

私が一番好きな金田一耕助は、映画『八つ墓村』で豊川悦司さんが演じた金田一耕助です。

 

クールでニヒルでセクシーなトヨエツが、金田一役でベラベラしゃべってるというのが、不思議な感じがして癖になります。

 

個人的な趣味ですが、斎藤工さんか山田孝之さんの金田一耕助が見てみたいです。どちらも美形ですので、もっと小汚くなって頂かなくてはなりませんが……。

 

■本の中で気になった言葉、セリフ 1シーン

横溝正史作品には必ず魅力的なヒロインが登場します。『犬神家の一族』では野々宮珠世がヒロインになっていますが、彼女の美しさの描写が読むたびに気になってしまいます。

 

「この世のものとは思えなかった」
「美人もここまでくるとかえって恐ろしい。戦慄的である」
「眼近に見る珠世の美しさはいよいよ尋常ではなかった」
「あまりの美しさを怖いと思った」

 

一応序盤に、珠世がどんな風貌をしているのか簡単な描写はありますが、基本的にこんな感じです。

小説において、美醜の描写というのは難しいものですが、ただ単純に「美しい」「醜い」「美少女」などを連発すると興醒めしてしまうことがあります。

 

しかし不思議なことに、横溝正史の作品いおいてはこのような書かれ方をしても、嫌な気がしないのです。

 

「あなたがこの世で一番美しいと思う人を想像してみて。その人よりも美人だから!」というような回りくどくない、勢いのようなものがあるからかもしれません。

 

『十角館の殺人』綾辻行人~変な館が舞台

■この本を読むことになったきっかけ

 

ミステリが読みたくてしょうがなかった頃、何を読めば良いか分からず「とりあえず、なんとかの殺人とか、何々殺人事件ってタイトルのものを読もう」と思って手に取った作品のうちの一つです。

 

同時期に読んだもので『オリエント急行の殺人』があります。

 

特にこの作品に惹かれたのは、「変な館が舞台」というところです。

 

ミステリはある程度のリアリティも大事ですが、娯楽小説でもあるので現実では有り得ない設定も大事だと思っています。

 

この「変な館が舞台」という設定は、なんともミステリらしい有り得なさで、私の興味をそそりました。

 

■本のあらすじ

 

九州の某所に位置する角島。そこには風変わりな建築家、中村青司が建てた十角館という奇妙な館が建っていました。

 

かつては青屋敷という建物もありましたが、半年前に中村青司の妻は左手首を切り落とされた上に絞殺、使用人夫婦が殺害され、青司も焼死体で発見されるという四重殺人事件が起きて全焼してしまい、今は十角館だけが取り残されているのです。

 

当時働いていた庭師の行方は未だ不明で、四重殺人の犯人は庭師ではないかと警察は睨んでいました。

そんな中、ある大学のミステリ研究会のエラリイ、ポウ、ヴァン、ルルウ、カー、アガサ、オルツィは奇妙な事件が起きた角島に興味を持ち、旅行気分で角島に上陸しました。

一方、本土にいる元ミステリ研究会の江南(かわみなみ)のところに『中村千織は殺された』という告発文めいた手紙が届きます。

 

差出人は半年前に死んだはずの中村青司。そして中村千織とは、かつて所属していたミステリ研究会の飲み会で、急性アルコール中毒になって死んでしまった青司の娘でした。

 

突然の手紙を不審に思い、中村青司の弟にあたる中村紅次郎に話を聞きに行きます。そこで島田潔という男と出会い、手紙が誰に届いているのかを、同級生の守須(もりす)恭一の助けも借りながら調査し、過去の四重殺人そのものを探るようになります。

 

本土で四重殺人の真相が調査されている時、島では「第一被害者」「第二被害者」などと書かれた人数分のプレートが発見され、翌朝にはオルツィが絞殺死体となって発見されました。

 

部屋のドアには「第一被害者」のプレートが貼り付けられ、彼女の左手首は切断されていました。

その後、カーがコーヒーに含まれた薬物によって毒殺されます。疑心暗鬼になりながらも推理を重ね、外部からの犯行で中村青司は生きているのではないかという疑いを持ち始めます。

 

島での惨劇を知らない島田と江南は、過去の事件は「千織は青司の娘ではなく、紅次郎の娘だった。青司は妻を愛するあまり嫉妬に狂い無理心中をした」というのが真相であると結論付けた。

 

当初、島田たちも中村青司は生きていて焼死体は庭師のものだと疑っていたが、実際は中村青司が自ら灯油をかぶり火をつけたというものでした。

 

そして島ではついにルルウとアガサ、ポウが殺害されます。残ったエラリイとヴァンは館の中に隠し部屋などがあるかもしれないと、くまなく探します。予想は的中し、館の中に隠し部屋を見つけました。

 

そこには、かなりの年月が経った死体がひとつ転がっていたのです。

 

翌日、守須のところに島の所有者である親戚から電話がきます。
「島に行った“大学生6名全員”が死体で発見された」と……。

 

■感想

 

日本のミステリに新たなブームを巻き起こした、ミステリ界に衝撃を走らせた作品です。

本作は『そして誰もいなくなった』をかなり意識した作品になっており、所謂クローズドサークル物です。

 

しかしそれだけでなく、角島の大学生らの事件と、本土で島田たちが探っている過去の四重殺人事件が密接に絡み合い、それが最後に一つにまとまるという、なんとも美しい話のまとまり方をしています。

 

ミステリではほぼ御法度とも言える、建物に仕掛けられたカラクリもなんの違和感もなく受け入れられる話運びになっています。

 

さて、本作は文章で読者を騙す叙述トリックという手法を用いています。私はこれまで、それなりにミステリを読んできて叙述トリックを使った作品も色々と読んできましたが、『十角館の殺人』の叙述トリックが一番震えました。たった一行でこんなに体中がゾクっとするとは思いませんでした。

 

それだけ犯人に意外性があり、面白いどんでん返しになっています。

 

この一行の破壊力をさらに際立たせているのが、新装改訂版です。ページをめくると例の一行が出て来るように文章量を調整してあるので、ページをめくった後に衝撃を受ける事になります。心憎い演出ですね。

 

とても衝撃的で面白い作品なのですが、綾辻氏のデビュー作という事もあり、全体的に粗い印象があります。強いて挙げるとすれば「犯人の動機が弱い」という点です。

 

犯人と中村千織との関係が後半になり唐突に語られ、しかもそれが逆恨みっぽいというのが、ちょっと気になりました。

 

作中の重要人物である中村青司は、『十角館の殺人』から始まる『館シリーズ』すべてに関わっています。彼について詳しく知りたい方は是非『暗黒館の殺人』を読んでみてください。

 

かなり長い作品ですが、中村青司が何者かが分かる重要な作品になっています。

 

■本を読んでいて自分が初めて知ったモノ、場所、言葉など

 

角島に渡ったミステリ研究会の7名は、それぞれ海外の有名ミステリ作家の名前をあだ名にしています。名前の元ネタと代表作をちょっとだけ調べてみました。

・エラリィ(エラリー・クイーン)

代表作『ローマ帽子の謎』『Xの悲劇』等

・カー(ジョン・ディクスン・カー/カーター・ディクスン)

代表作『三つの棺』『緑のカプセルの謎』等

・ポウ(エドガー・アラン・ポー)

代表作『モルグ街の殺人』『早すぎた埋葬』等

・ルルウ(ガストン・ルルー)

代表作『黄色い部屋の秘密』『オペラ座の怪人』等

・アガサ(アガサ・クリスティ)

代表作『そして誰もいなくなった』『オリエント急行の殺人』等

・オルツィ(バロネス・オルツィ)

代表作『紅はこべ』『隅の老人』

・ヴァン(S・S・ヴァン・ダイン)

代表作『グリーン家殺人事件』『僧正殺人事件』等

 

いずれの作家も、ミステリや幻想小説の先駆者たちです。海外ミステリも読んでみたいなと思った方は、この中のどれかをまず読んでみる事をおすすめします。

 

■本の中で気になった言葉、セリフ 1シーン

 

『十角館の殺人』に限らず、綾辻行人氏の小説全般に言える事なのですが、登場人物の喫煙者率が非常に高いです。

 

セブンスターやセーラムといった、今の若者が吸わないような銘柄がバンバン出てきます。作中では煙草が凶器に使われているシーンもあり、ただのアイテムではなくミステリらしい演出に一役買っています。

 

読んでみると、登場人物のほぼ全員が喫煙者だったような気がします。探偵役の島田潔にいたっては、元ヘビースモーカーで体を悪くして以来一日に一本だけという謎のこだわりを見せています。

 

ここまで「煙草を吸う」という事にこだわっている小説は、現在に至るまであまり見た事がありません。もしかしたら綾辻氏自身が愛煙家で、煙草に並々ならぬこだわりを持っているのかもしれませんね。

 

煙草を吸うタイミングや、煙草の吸い方などがとても細かく描写されており、良い意味でマニアックさを感じます。普段煙草を嗜まない人でも、読んでいると吸いたくなってしまう……そんな魔力があります。

 

しかし、登場人物のほとんどが大学生……なのに煙草は吸うわ酒はよく飲むわと、今と比べると時代を感じます。本作が世に出たのが1987年ですので、その当時は今ほど喫煙に対する風当たりは強くなかったのでしょうね。

 

煙草は犯人が誰かというヒントでもあります。気になる方は注意して読んでみてください。

オリエント急行の殺人~容疑者全員が犯人という結末

■この本を読むことになったきっかけ

 

まだミステリを読み始めたばかりだったので、誰がどんな作品を書いているのか皆目分からない状態でした。

 

図書館に行って「とりあえず、何々殺人事件とか何々の殺人ってタイトルの本を読もう!」という行き当たりばったりな方法で見つけてきたのが、この作品でした。

 

■本のあらすじ

 

外国での仕事を終えた名探偵ポアロは、イスタンブール発のオリエント急行に乗ってヨーロッパに帰ろうとします。季節外れにも関わらず満席の列車には、出身国も性別も年齢も様々な人々が乗り合わせていました。ポワロは乗客の一人であるアメリカの大富豪、ラチェットという男から「脅迫状が来て命を狙われている。

 

私を守ってほしい」と頼まれますが、一目見てラチェットに嫌な感情を持ったポワロは、その頼みを断ります。

その日の夜、列車の個室の中でラチェットは刺殺されました。体には強弱様々な12の刺し傷。ポワロと現場検証した医師のコンスタンチン、ポワロの友人で国際列車会社の重役ブック氏は、乗り合わせた乗客たちの事情聴取を開始します。

「真紅のキモノを着た婦人を見た」
「従業員のボタンを見つけた」
「高価なハンカチが現場にあった」
「パイプが落ちていた」
「背の低い女のような声の車掌を見た」

などのヒントが聞けたものの、乗客たち全員に鉄壁のアリバイがありました。それは、乗客同士で保管し合っているもので崩すのが不可能なものばかり。

そんな折、ラチェットの正体が明らかになりました。彼はアメリカで起きた凶悪犯罪、アームストロング令嬢誘拐殺人事件の犯人だったのです。

 

今回のラチェット殺しにはこの過去の誘拐事件が絡んでいるとポワロは睨みます。

 

ポワロたちは熱心に事情聴取をし、次第に乗客たちがアームストロング家にゆかりのある人物たちだと判明します。そしてこの事件の犯人は、何らかの形でアームストロング家と関わっていた乗客すべてでした。

彼らは誘拐事件によって崩壊したアームストロング一家の復讐のために集い、ラチェットを殺害し、全員でアリバイを示し合わせていたのでした。

 

■感想、意見

 

ミステリには読者に対して、「フェアか」「アンフェアか」という問題が付きまといます。

フェアというのは「読み進めれば何となくでも犯人が分かる」「論理的な推理の上に成り立っている」というものです。

アンフェアとは極端に言ってしまうと「犯人は超能力を使いました!」「犯人は作中に一切登場しない誰々です」「犯人はこの本を読んでいるあなた自身です」といった感じのものです。読者が犯人というのは実際にあったような気がします。

本作は「ポワロ一行以外の全員が共犯」という奇想天外な結末で、多くの読者を驚かせてきた名作です。私自身はこの結末が非常に好きで、初めて読んだ時は驚きと同時に「あ。ミステリってこういうのもOKなんだ」とミステリというジャンルの幅広さにびっくりした記憶があります。

 

ミステリってもっとガチガチな堅苦しいものだと思っていたのですが、全員が犯人でも許されるんだなぁと感心してしまいました。

 

最近だと、偶然や勘違いが重なって事件が起こりました…みたいなミステリも多いですから、日々進化しているジャンルです。

 

しかし、本作はフェアかアンフェアかに分けるとしたら人によって異なると思います。全員が共犯なんて分かるか!と怒る人も少なくありませんので、アンフェアと判断する人もいるでしょう。

ですが私は『限りなくアンフェアに近いフェア』だと思っています。何故なら、序盤の数ページでなんとなくでも犯人が分かってしまう人がいるからです。

それはオリエント急行が「季節外れなのに満員で賑わっている」「鉄壁過ぎるアリバイ」という点です。かえって怪しい。

 

この点で少しでも違和感を覚えたら、事件の全体像が見えてきます。そう考えると、非常にフェアなミステリと言えるのではないでしょうか。

 

とかなんとか言いながら、私は初回さっぱり分からなくて感心してばっかりでした。

 

■本を読んでいて自分が初めて知ったモノ、場所、言葉など

 

物語のタイトルにもなっているオリエント急行ですが、1883年から2009年まで実際に走っていました。

 

経路は様々でしたが、ヨーロッパとバルカン半島を結ぶ豪華列車として人気を博しました。『オリエント急行の殺人』の舞台となったワゴン・リ社のオリエント急行は2009年に定期便が廃止されましたが、世界中にオリエント急行と名の付く豪華列車はたくさんあるようです。中国にもチャイナ・オリエント急行というものがあるようです。

ちなみに現在は、ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレスという名前でパリやロンドン、ベニス、イスタンブール、ブタペストなどを結ぶ豪華列車が走っています。

日本でも寝台列車の旅が近年人気を集めており、何十万もする豪華列車がありますね。一度でいいからこういう豪華な寝台列車で旅行をしてみたいものです。

 

■本の中で気になった言葉、セリフ 1シーン

 

私が最も好きなのは、ラストの数ページ。乗客全員を集めて事件の真相を話すシーンです。

 

いかにも名探偵!といった犯人当てシーンなのですが、先述した通り「全員が犯人」という話ですので、ポワロが一人一人の素性を暴露していく場面は、非常にワクワクしてきます。ポワロが淡々としている分、余計にこっちは熱くなってしまいます。

 

また、ポワロは捜査中も「ちゃんとはっきりしたことが分かるまでは何も言えない」と簡単に推理を口にしない探偵ですので、終盤になるまで余計な推理が入り込まず真相に集中できます。

中でも、おしゃべりおばさんとしか見てなかったハッバード夫人の正体には驚かされました。

 

アームストロング家に縁がある人物というのは間違いないのですが、どういうポジションの人物かは実際に読んでからのお楽しみという事で…

 

余談ではありますが、この作品は2017年冬にリメイクされた映画が全米公開されます。
ラチェット役は『パイレーツオブカリビアン』シリーズでおなじみのジョニー・デップ。

 

ハッバード夫人役は『バッドマンリターンズ』『ヘアスプレー』出演のミシェル・ファイファー。ドラゴミノフ夫人役に『007』シリーズのM役でおなじみのジュディ・デンチ。

 

他にもペネロペ・クルスなど超豪華キャストです。

日本ではいつ頃公開になるか定かではありませんが、2017年11月に全米公開ですので、日本での公開は2018年に入ってからになるのでしょうか?
映画公開前に是非原作も読んでみて下さい。