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又吉さん推薦『紙の動物園』を読んでみたけど

小説

『紙の動物園』私の感想

 

本好きの読書家でなければ知らないような作家の作品ですが、著名なSFの賞を史上初の3タイトル同時受賞のキャッチコピー、そして今を輝く又吉直樹さんの推薦文付きということで、手に取る人は多かったのではいでしょうか。

 

私は日曜日のテレビ番組『アッコにおまかせ!』に出演していた又吉さんが、「夏休みの読書感想文におすすめな本は?』と聞かれた又吉さんが、この本の名前をあげたので、読むことにしました。

 

この作品は短編集なので入り込みやすかったのですが、もともと私は、

SFにはあまり興味がなく、結果としては、私が全編を読み切ることは出来ませんでした。

 

作風に、自身のバックグラウンドが色濃く反映するタイプの作者さんですね。

 

作者は小さい頃にアメリカに移住してきた過去を持ち、その中国系アメリカ人としての生い立ちが作品を魅力的にしていると感じました。アジアの香りがするSF小説はこの作者にしか書けないものでしょう。

 

アメリカに移住してきたものの英語が話せない中国人の母親と息子の話など、なかなか日本国内の作家には扱えないテーマだと思うので、新しい世界観に出会いたい方にオススメです。

次は長編に期待しています。

 

  1. 『紙の動物園』著者:ケン リュウ,    古沢 嘉通 (翻訳)

413ページ

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“ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた…。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人乗組員が穏やかに回顧するヒューゴー賞受賞作「もののあはれ」、中国の片隅の村で出会った妖狐の娘と妖怪退治師のぼくとの触れあいを描く「良い狩りを」など、怜悧な知性と優しい眼差しが交差する全15篇を収録した、テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭がおくる日本オリジナル短篇集。” 引用:Amazon.com『紙の動物園』

 

 

ケン・リュウさんのデビュー以来の短編の中から15編が選ばれ、集められた短編集です。作者のことも作風もよくわからない最初の頃は、SFということで「難しいんだろうな」と身構えていましたが、意外にも泣ける作品ばかりでした。

 

表題作の「紙の動物園」は母と子の物語です。アメリカに移住してからも英語が話せない母親が作ってくれる折り紙の動物たち。やがてその母親と、子である主人公はすれ違っていくのですが、その「紙の動物たち」に込められた母の想いがグッときます。直接的な会話ではなく、折り紙に思いを託したところが何ともセンチメンタルでした。

 

この「英語が話せない」という部分が、やはりキーポイントでしょうね。アメリカの中で移民として暮らす人々にしかわからない感情が伝わってきて、とても考えさせられます。作者の経験談なのかはわかりませんが、少なからず移住した先でそういう思いを味わったのではないでしょうか。だから、この物語はこの作者にしか書けないと思いました。

 

他にも「文字占い師」、「良い狩りを」が泣けました。短編集ということで、それぞれかなり違うテイストのSF小説が楽しめます。これ、同じ人が書いているの?と思ってしまうぐらい、多彩です。でも、どの短編も「人と人」がテーマになっているのが印象的でした。

また、作者は日本人ではありませんが、日本に関するキーワードがいくつも出てきて親近感が湧きます。あと、何だかちょっと懐かしい感じもしました。アジアの香りがするSF小説から日本の香りも漂ってくるという新感覚な作品です。

 

5.読む必要がないと思われる人

新しいSF作品より過去のSF作品が好きな人。SFマニアな人。

 

「物語のキモ・ネタバレ」

 

・ケン・リュウの短編15篇が集められた短編集。

・表題作である「神の動物園」は中国からアメリカへ移住してきた母と、その母とアメリカ人の父の間に生まれた息子の物語。母親は自分の不思議な力で、息子のためにまるで生きているかのような折り紙の動物たちを作った。しかし母親は英語が話せなかった。やがてそのことが息子のコンプレックスとなり、二人の距離が広がっていく。

・「もののあはれ」の主人公は日本人。他の短編でも、日本を感じるキーワードやフレーズが多々登場する。

・SF小説としてくくられているが、どれも隠れたテーマとして「人間」を扱っている。

『ランチのアッコちゃん』お昼休みに読みたい本

小説

私の感想

 

 

まず、ストーリーに関することから述べたいと思います。

 

第1章は【ランチのアッコ】ちゃんで、第2章は【夜食のアッコちゃん】へと続くのですが、【夜食のアッコちゃん】では、なんとアッコちゃんと美智子が働いていた「雲と木社」は、倒産した・・ってことになっていて、美智子は商社の派遣社員に転職してました。

 

えらい話飛ぶのですね!

あの時の美智子の企画書はパアになっちゃったのね。

続きは無しです(笑)

 

それでもって営業部長だった黒川敦子(アッコちゃん)は、「東京ポトフ」っていうワゴン者で移動するお弁当屋さんに転身していて、第一章のランチのアッコちゃんのように一週間の間に様々な職業の方と関わっていく中で、美智子が成長していくってお話です。

 

人気の作品になっていたので、気になって読んでみたのですが、結果から言えばそこそこ楽しめた作品です。

 

ただ、出来過ぎ感も強くて、これは、感想も両極端に別れる作品ではないでしょうか。

 

そんなの現実に起こりっこないじゃん?とツッコミを入れたくなる人はけっこういるかも?

 

まあ、でも大人向けのおとぎ話でいいじゃないですか!

世の中、何でもかんでもリアリティ&リアリティじゃ気も滅入ってしまいますよ…。

 

あらすじの煽り文にもあるように、この小説は「ビタミン」なのです。

シンプルに元気をくれる爽やかな小説って、それだけですごい作品だと私は思います。

 

人の心をプラスに動かすって、とても難しいことだと思うので。

ありえない設定や展開にツッコむのは二の次にして、もっとあたたかみを感じてみてはいかがでしょうか?

 

何気なく背中を押してくれるような「ささやかさ」が素敵でした。

それと…、アッコ先輩に会ってみたいです。

 

どんなアドバイスをもらえるんですかね?

 

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ランチのアッコちゃん』著者:柚木麻子

166ページ

 

3.本の内容 あらすじ

“地味な派遣社員の三智子は彼氏にフラれて落ち込み、食欲もなかった。そこへ雲の上の存在である黒川敦子部長、通称“アッコさん”から声がかかる。「一週間、ランチを取り替えっこしましょう」。気乗りがしない三智子だったが、アッコさんの不思議なランチコースを巡るうち、少しずつ変わっていく自分に気づく(表題作)。読むほどに心が弾んでくる魔法の四編。読むとどんどん元気が出るスペシャルビタミン小説! ”(引用:Amazon.com)

 

『ランチのアッコちゃん』のレビュー・評判

 

読み終わった後、何だかちょっと前向きになれます。

サクサクと読める4篇の短編集です。直接的に元気になる方法を教えてくれる訳ではないのですが、なぜか背中を押してくれる温かい感じがとても印象的でした。

 

まさに「ビタミン小説」ですね。フラれて落ち込んでいても、美味しいランチで気分転換。単純だけど、こういう良い意味での軽さが大切なのではないでしょうか?

 

また、いろいろなタイプの女性が描かれているのが面白かったです。表現にリアリティがあってキャラクターに親近感が湧きましたし、共感もしやすかったです。美味しいご飯や他愛もない会話で元気が出た経験、誰にでもありますよね?

 

逆にストーリーや設定には少しリアリティが欠けているんですけど…。そこを楽しむくらいでないと、頭がカチカチ過ぎる気がします。

 

おとぎ話だと割り切って、うまくいきすぎな展開もいっそ笑い飛ばしてみて下さい。意外とそこから「見方を変えれば世界が変わる」ということを実感できるかもしれません。実はここがポイント。

 

段々と「見方を変えれば世界が変わる」のは小説の中だけではなくて、自分の身の回りにだってあてはまるということがわかってくるのです。この作品を読むと、そんなフシギ体験ができます。

 

決して重厚さはありませんが、その軽さがこの本の持ち味です。軽いからこそ、疲れた時に丁度良く読めますし、ほっとしたり気分が明るくなったりもします。

 

読んだ人みんなの心に効く一冊でしょう。

 

 

予定調和な演出や展開をファンタジーとして楽しめない人。あと、グルメがメインではないので、注意が必要です。

 

物語のキモ・ネタバレ

 

・「ランチのアッコちゃん」の話は短編集の1話と2話。

・アッコちゃん、とは主人公の上司・黒川敦子のこと。主人公はパッとしない派遣社員・美智子。

・彼氏にフラれた美智子がオフィスで元気なく昼食の手作り弁当を食べていると、上司である黒川に「一週間のランチ交換」を持ちかけられる。その日から、美智子は弁当を黒川に渡し、代わりに黒川に指定された昼食をとるランチタイムが始まった。

・最初は嫌々だった美智子だが、指定された店に足を運ぶうちに少しずつ楽しくなってくる。やがて、ランチタイムの人とのふれあいを通して、黒川からのメッセージに気付き、パッとしなかった美智子の人生が変わっていく。

・第2話は二人の会社が倒産。美智子は別の会社へ、黒川はポトフの移動販売を始める。新しい会社での悩みを抱える美智子が黒川と再会し、その仕事を手伝うことになる。

 

『蜜蜂と遠雷』文章で奏でるピアノの調べに感嘆

小説

蜜蜂と遠雷は直木賞&本屋大賞のダブル受賞

 

本作は群像劇ということですので、ストーリーより先にキャラクターが全面に出てきている印象があります。登場人物の中でも主要の4人は天才的な音楽の才能を持っており、常人とはかけ離れたところがあるようです。

 

この人物描写については、良くも悪くも人気漫画『ピアノの森』と比較され、「漫画的」「ラノベ的」と言われています。このような評価が出て来るのは、天才を書くのがいかに難しいかを表しているのではないかと思います。

 

天才を表現するとなると、どうしても突飛でエキセントリックな性格などになりがちですので、そういった表現が時に「漫画的」と言われてしまう要因なのかもしれません。
また、レビューの中に「ドラマ化、映画化してほしい」という意見もちらほら見受けられました。

 

映画でどう表現されるのか、私も観てみたい気がします。

 

映像で天才たちの演奏を味わうというと、小説とは違う楽しみ方も出来そうですね。しかし、『蜜蜂と遠雷』の良さは「音楽を文章で表現」したというところですので、これはこれで賛否があるのかなと感じました。

 

『蜜蜂と遠雷』著者:恩田陸 507ページ
本のタイトル 著書 ページ数

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【本の内容】

“俺はまだ、神に愛されているだろうか?
ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。
著者渾身、文句なしの最高傑作!
3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか? ”(引用:Amazon.com)

 

蜜蜂と遠雷の感想・評判

 

ピアノコンクールが主な舞台になっているので、ピアノの音をどうやって言語化するのか?天才が奏でるピアノの音をいったいどんな表現を使って演奏させるのか、果たしてそれは、読み手に伝わるのか?この本の概要を見て、こういった疑問は誰もが感じたことでしょう。その疑問は読み始めてすぐ吹っ飛んでしまいます。

 

まるで、自分が会場の一席に座っていて、ピアノの調べが奏者のイメージと共に脳裏に響いて来るかのような臨場感さえ感じました。

 

この本は、クラシックやピアノに精通している人も、今まで感心がなかった人も、この物語で奏でられている名曲を聴いてみたい!と思った方は多いでしょう。もちろん私も含めてです。

 

直木賞を受賞し一気に売れ出したと同時に、”蜜蜂と遠雷のオリジナルサウンドトラック”があればいいな~という声がたくさんあがりました。それからすぐCDが販売されましたネ。

 

【登場人物について】
蜜蜂と遠雷に登場するキャラクターの中に、”悪役”が居ないのが特徴ですね。ピアノのコンクールと言えども勝負の世界です。

 

そこで結果を出せるか否かで、今後のピアニストとしての活躍の場がぐっと広がり、将来の道も変わって来るのです。なので、誰もが必死の思いでここまでやって来たのですから、当然、妬みや 嫉妬もあるに違いありません。

 

お金持ちの意地悪な人が一人くらい居てもおかしくないのですが、ここには出て来ませんでした。
レビューにもありましたが、主要人物の中で、ちょっぴり鼻につくのがアヤですかね?
見方によっては自己中心的なお嬢様、はたまた八方美人に見えます。

 

ピアニストとして完全復活するまではモタモタしますが、回を追うごとに彼女の成長は感じられました。

 

マサルは完全に出来過ぎ君です。

 

蜜蜂王子こと風間塵の存在については、マンネリになりがちな流れをに刺激を与えるカンフル剤の役目をしているのかも知れません。

なぜ、アヤと共鳴しあうのかが謎でした。

 

蜜蜂と遠雷を読む前にココをチェック!

 

・500ページ超え、しかも文字が上下段にびっしり!
とにかく長い本なので、途中で挫折する人もいるかも知れません。私も購入する際、そこそこ迷いました。読書初心者さんには不向きかも知れません。

 

蜜蜂と遠雷本の厚み

 

村上春樹の小説も上下巻あってかなり長いのですが、一冊で同じくらいあるんじゃないか?と。

・良くも悪くも人気漫画『ピアノの森』と比較され、「漫画的」「ラノベ的」と言われています。
・ピアノコンクール中心に進むお話なので、予選、本選と何度も同じような場面が繰り返されるので、マンネリ感は否めません。
途中で飽きる可能性もあり。音楽に多少でも感心のある人の方がより感情移入しやすく、臨場感もイメージしやすいです。

 

ピ-ス又吉『火花』

小説 - 小説 - 芥川賞受賞作品

私の感想

 

今を輝くお笑い芸人が書いた小説であること。芥川賞受賞作品であること。純文学であること。

これらの絶妙な相乗効果によって売り上げがすごいことになっちゃいましたね。

 

これまで累計発行部数は300万部、2016年の書籍売り上げは断トツの第一位です。

 

「芥川賞獲った芸人の小説、小難しくて気取っていてよくわからなくてつまらない」と思った方もいるんでしょうが、読書初心者の私が読んでも読みやすいと思ったし、やはり驚いたのは、お笑い芸人ピースの目立たない方の人(これまでは綾部の方がピンで露出多かったですし、漫才はほとんど見たことがなく)、という認識しかなかった人が、見識とかけ離れた才能を見せつけらたことが衝撃的だった・・というところでしょうか。

 

て芸人さんが書いた小説がここまで緻密で面白いとは!?ってところで、新鮮な気持ちで読めたのだと思いました。

 

その後、母にもすすめて本を貸し出したのですが、普段本など全く読まない母でさえ、「面白かった!」という感想が返ってきました。

 

そもそも純文学って芸術性が高いもので、一般的な面白さが問われるものではないと思うんですけど、お笑い芸人と純文学は共生できませんか?

 

確かに、作者が芸人なので、お笑いのことを描くのはある種のズルとも捉えられます。

でも、本質はそこではありません。

 

人間の真っ直ぐさ、ひたむきさ、それ故の不器用さ。

私にはひしひしと伝わってきました。

 

「火花」というタイトルも…、読後、それぞれの心に染み入るものがあるはずです。

この作品が作者から切り離されて評価されれば…、と感じています。

 

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『火花』著者:又吉直樹:180ページ

 

3.【本の内容】

 

“売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。第153回芥川賞受賞作。芥川賞受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」を収録。 ”(引用:Amazon.com)

 

火花のレビュー・評判

 

これまで芸人が書いた小説を読んだことがなく、話題になっているけど、いったいどんなことを書いているんだ?という気持ちで、ほとんど期待もせずに読みだしましたが、読みだしたら止まらないのですね。

 

思ったよりも好感が持てた、と言うのが大方の反応ではないでしょうか。

 

その理由として、まず、どのキャラクターにも人間味が感じられたからだと思います。この「人間を描く」というシンプルなテーマが、ズバリ純文学でした。

 

そして、文章や表現も含め、描き方がとても細かく丁寧であることも素晴らしかったです。

「盛り上がりに欠ける」という批判もあり、確かにその通りなんですけど、その淡々とした雰囲気が登場人物の日常を非常によく浮き立たせています。変に嘘くさいストーリーより断然、魅力的です!

 

また、作者が芸人ということで、お笑い芸人の素顔や本音が垣間見られるのも面白かったです。普段はふざけている芸人さん達が「笑い」というものとどう向き合っているのか、悩みや喜びを知ることができます。

 

ここに徹底したリアリティがあるのも、又吉さんの文才でしょう。時にぶつかり、時に認め合い…、そんな主人公の徳永と先輩・神谷のやり取りも、クスッと笑えてホロリと泣けました。何気ない会話が実は哲学的だったりして、結構深いのです。

 

結局、又吉さん自身がマジメなんだと思いますが、徳永も神谷も「笑い」に真正面から取り組んでいる姿が本当に印象的でした。徳永の不器用な感じ、プラス、神谷のぶっ飛んでる感じが絶妙です。

 

神谷は徳永に無理難題を押し付けたり、路上で突然訳のわからないことを叫び出したりと、本当にぶっ飛んでいます。その生き方はまさに破滅的で、最後の最後は、そこまでしたらアカンやろ?ってとこまでイっちゃってます。

 

読んだ人からは「お笑いの意識高い系」なんて言われていて、正直、一般人には神谷の笑いがなかなか理解できません…。

 

誰かモデルがいるのか、又吉さんの理想像なんですかね?ちょっとギャグセンス高めです。

 

最後に。芥川賞受賞とは言え、まだ粗削りな感じもあったので、次回作からどう変わっていくか注目したいと思います。

 

読む前に知っておくと良い点

 

この本が向かない人は、お笑いに興味がない、分からない人、娯楽小説に慣れてしまった人です。あと、必要以上に「お笑い芸人が書いた小説」という情報に囚われてしまっている人も楽しめないと思います。

 

【火花 ネタバレ】

 

・主人公は若手芸人の徳永。徳永は熱海で、売れない先輩芸人の神谷と出会う。徳永は神谷の才能に衝撃を受け、弟子入りを志願。すると神谷は見返りとして「自分の伝記を書いてほしい」と頼み、二人は行動を共にし始める。

 

・神谷は天才肌で、破天荒なタイプのお笑い芸人。その笑いは一般人にはあまり受け入れられず、先に売れ出したのは徳永のコンビ「スパークス」。

 

・一度は師匠と弟子という関係になった二人だが、やがてその距離が開いていくこととなる。

 

・徳永は相方の引退とコンビ解散。神谷は周りからの孤立、そして多額の借金による失踪という展開を迎える。

 

・結局徳永もお笑い芸人を辞め、サラリーマンになるが、しばらくして神谷と再会。しかし、久しぶりに会った神谷は衝撃的な姿になっていたのだった。

 

現在、2作目恋愛小説「劇場」も出版されていますが、なんとなくまだ読む気にはなていません。

 

又吉さんは火花を出す前にも数々面白い本を出しています。

お勧めなのは『第2図書係補佐』です。

これ、とっても面白いので個人的に押します!

 

体験談に思わず吹き出したり、心を打たれたり素の又吉さんのお人柄に触れることができますよ。