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対象年齢が不明の『あるかしら書店』

絵本

あるかしら書店どの年代からも評価が高い

 

「○○ってあるかしら~?」、「あるかしら~?」と言って、たくさんのお客さんが訪ねてくる本屋さんのお話。

ただし、普通の本屋さんではありません。

「本にまつわる本」の専門店なのです。

「こんな本あったらいいな~」と思えるものばかり。

 

…という作品なので、紹介されている本やエピソードは残念ながらフィクション。

 

ところで、あるかしら書店って子供向けの絵本?だと思うのですが、大人が読んでも飽きません。

 

 

奇想天外な飛び出す絵本ならぬ、とけだす本、食べだす絵本、かけ出す絵本・・

読書が苦手な人には『読書サポートロボ』登場、いろんな挫折ポイントで活躍してくれます。

これらの本のこと、ちょっとその場で想像してみてください。

 

ふざけた本も多いですが、たまに、湖に浮かぶ『水中図書館』や、本が好き過ぎてなかなか手放せない人のところへやって来る『本とのお別れ請負人』等、ロマンティックなストーリーものもあったりと、次のページではどんな本が紹介されているのか、わくわくしてきます。

 

なかなかどうして、最初の1ページから、最終ページまで楽しめたので満足です。また2度見、3度見しそうです。

 

電子本で読んだけど、紙の本の方がいいかもね。

 

 

読後、誰もが「あるかしら書店」に行きたくなるのではないでしょうか?

ヨシタケさんのやわらかい思考、想像力に脱帽です。

目次が本棚なのもすごくカワイイです。

本への愛情がとにかくいっぱい。

本好き・本マニアの弱いところをグリグリとくすぐってきます。

 

それにしても、この絵。どこかで見たことのある絵だな~と思ったら、話題になったあの「もうぬげない」のヨシタケシンスケさんだったのですね。

 

独特のタッチとユーモアで有名な絵本作家さんです。

この本は、ヨシタケさん自身の、本への愛や敬意がぎゅっと詰まっていると思いました。

 

『ラブリーラブリーライブラリー』の中で”図書館の本は誰かをずっと待っている”というお話は胸が熱くなりました。

そう言えば、私もうずいぶん長く図書館へは行ってないなあ。

 

読み終わっても、いつでも「あるかしら書店」に行けるように、そばに置いておきたい一冊です。

 

親子で読めば、お子さんが本好きになるきっかけとなるかもしれません。

 

『あるかしら書店』著者:ヨシタケシンスケ

102ページ

 

本の内容

 

『あるかしら書店』

その町のはずれの一角に、「あるかしら書店」があります。このお店は「本にまつわる本」の専門店。店のおじさんに「○○についての本ってあるかしら?」ってきくと、たいてい「ありますよ!」と言って奥から出してきてくれます。今日もあるかしら書店には、いろんな理由で本を探しにお客さんがやってきます。

この本屋さんでは、「あったらいいな」という本や夢いっぱいのグッズが、次から次へと飛び出します。月明かりの下でしか読めない「月光本」、読書に付き合ってくれる「読書サポートロボ」、ふたつの本を合わせて初めて読むことができる「2人で読む本」などなど、読んだらきっと「本ってやっぱりいいよねぇ」と言いたくなってしまうエピソードが満載。大人気の絵本作家ヨシタケシンスケさんの豊かな発想力がめいっぱい詰まった、ますます本が好きになってしまう一冊です。(引用:Amazon.com)

 

『あるかしら書店購入前の注意点』

 

フリガナがなかったりするので幼児向けではなさそうだけど、絵本のようなそうじゃないような…と、どの年齢層がターゲットなのか?と思える不思議な本です。

小さなあなたへ 母として娘として

絵本

■この本を読むことになったきっかけ

 

妊娠中に通っていた産婦人科に置いてあり、手に取りました。

 

たまごクラブとかひよこクラブといった雑誌類や、子供連れで訪れる人も多かったので、幼児向け絵本が並ぶ中で「絵本なのに大人向け」という非常に存在が浮いていたのを覚えています。

 

内容を見て、これは確かに産婦人科に置いておくのは良いかも!と感動しました。

 

■本のあらすじ

 

赤ちゃんが生まれたその日から、成長し様々な経験を経て大人になり、やがてその子も親になり年老いていくまでを描いた絵本です。

母の無償の愛がいっぱいに詰まった作品です。

 

■感想

 

ストーリーらしいストーリーが無い絵本です。赤ちゃんが生まれた日から、お母さんから注がれる愛情がひたすら綴られています。

内容が内容なだけに、絵本でありながら完全に大人向けです。

 

子供が読むとしても中学生くらいからが良いかもしれません。
私は普段本を読んで泣くことが無いのですが(泣くような本を読んでいないだけなのですが)これは泣きました。

 

ですが、初めて読んだ時と現在とだと感想が少し異なります。
私が初めて読んだ時は妊娠中だったため、まだ子供はいませんでした。その時に読んだ感想は「自分は母からこんな風に愛情を注がれてきたんだな」というものです。

 

自分の大して長くも無い人生を振り返り、母が自分に何をしてくれたか、自分が母に何をしてきたか、これから母に何をしてやれるんだろう…等々色んな事を考えました。

 

次に読んだ時は出産した後です。その時は「この子もいつか大きくなって老いていくんだな。その時、この子の中で母とはどういう存在になれるんだろう」と感じました。

 

子供はいつか必ず成長し親元を離れていきます。嬉しくもあり切なくもある…そんな気持ちをこの本を読んで初めて知りました。

 

私の母もそういう気持ちだったのだろうかと思うと、良い歳なのに母が恋しくてたまらなくなります。

 

親としても子としても深く読める絵本です。

ただちょっと残念なのが、男の子のお母さんは感情移入がしにくいかもしれません。挿絵がすべて女の子なのと、なんとなく娘を対象にしているような文脈がところどころあります。

 

あと、男性が読んでも女性ほどの感動は得られないと思います。内容があくまでも「母親からの無償の愛」ですので、息子や父親の視点からとなると感情移入が難しいと思います。

 

■本の中で気になった言葉、セリフ 1シーン

 

そうしていつか ながいとしつきのはてには、あなたじしんのかみも ぎんいろにかがやくひがやってくる
わたしのいとしいこ。そのときは、どうかわたしをおもいだして

 

最後の一節です。我が子が年老いた時、自分自身はもうこの世にいないでしょう。そんな時に、自分の子供が人生を振り返った時、お母さんのことを思い出してほしいと思うのは、親なら誰もが考える事だと思います。

 

また、子供の立場から見ると、それくらいの歳になると思い出の中でしかお母さんに会えないんですよね。

 

思い出の中のお母さんは自分が子供の頃のままで、いつでも溢れんばかりの愛を注いでくれます。それを懐かしいと思い返す事もあるでしょう。

 

このシーンで印象的なのが、部屋の中に生まれた時に、お母さんが赤ちゃんの指にキスをしている写真が飾ってあるという事です。

 

自分の子供が生まれた時の事を思い出しますし、自分はどんな風にして生まれて来たんだろうと考えたりもしました。

 

余談ですが、これから出産を控えている方は出産したら早いうちに(可能なら入院中に)赤ちゃんとのツーショットを撮影しておくと良いです。

 

退院しすぐに赤ちゃんとの生活が始まりますが、そうなると写真を撮る余裕が無くなってきます。

 

撮ったとしても我が子のピン写真ばっかりか、お父さんと赤ちゃん、おばあちゃんと赤ちゃん…といった感じで自分はもっぱら撮影係です。

 

お母さんとのツーショットは特別です。顔がどんなに疲れていてもスッピンで髪がぼっさぼさでも構いません。是非撮っておきましょう。

 

*この記事の執筆者は浅丸千代乃さんです*

ママがおばけになっちゃった!ちょっぴり辛口感想

絵本

■この本を読むことになったきっかけ

朝8時の『とくダネ!』で”一般書以上に絵本がベストセラーになっていると”紹介されていたのを見て、興味を持ちました。

 

女性アナウンサーの方も涙ぐんでいたので、絵本とはいえ、これは読んでみたい!と思ったのです。

 

■本のあらすじ

 

交通事故で死んでしまい、おばけになってしまったかんたろうのママ。ママはまだ4歳のかんたろうの事が気になって仕方ありません。

かんたろうはママが死んでしまった事を悲しみます。

おばあちゃんにママの年齢を65歳だと周りに言っちゃった事、ママにはなくそを食べさせちゃった事、ママのパンツを履いている事を打ち明けます。

 

そしてその日の夜12時、かんたろうはおばけになったママと再会し、悲しくて二人で大泣きします。

 

おばあちゃんが起きちゃうからと夜の散歩に出かけ、ママはかんたろうに「ママはおっちょこちょいだったけど、かんたろうを生んだのは大成功だった」「ママはかんたろうのいい所も駄目な所も大好き」と言います。

朝になるとママの姿はありませんでした。かんたろうはこれからは一人で頑張ってみると決意しました。

 

ママがおばけになっちゃった!読んだ感想

 

ママが交通事故で死んでしまうという、ショッキングな場面から物語は始まります。
親の死という非常に暗く重いテーマを、可愛らしいイラストとコミカルさで鬱々としない明るい雰囲気で読むことが出来ます。

 

ママとかんたろうくんの会話もテンポが良く、楽しく読める絵本だと感じました。

 

ここからは少々辛口になりますが、世間で評価の高い物語の内容に関しては「中途半端だな」と思いました。

子供への読み聞かせ用にしては「テーマが重く大人からの目線でずっと物語が進行する」という点が気になりました。

 

だからといって大人向けかと言うとそうでもなく、「死を通じて母から子への愛情を描いているけど深みが無い」と思いました。

子供向けにするにしても大人向けにするにしても中途半端で、読んだ後にじっくり何かを考えられるかと言うとそうでもない。

 

それは恐らく、作中の言葉の量が多すぎるからなのではないかと思います。

「ママはかんたろうが大好き」ということを、ストレートに言葉で言い過ぎてしまっていて、考える余地を読者に与えないような作りになっているような気がします。

絵本の読み聞かせは、ある一定の年齢になったら読んだ絵本について語り合うことも重要になってくると私は考えています。

 

その作業は作品に『読者に想像させたり考えさせる余地』を与えているかどうかで有意義になるかが決まります。明確な解答が無くても良いんです、考えることが大事です。

しかし本作は『読めば全部書いてある』というものですので、テーマが重い割には考えさせたり語り合うことが難しい作品です。

 

一方的に感動的な話を押し付けられておしまい、という印象を受けました。

 

■本の中で気になった言葉、セリフ 1シーン

 

感想でかなり辛口に書きましたが、作中の台詞で良いなと感じたものもあります。
主人公のかんたろうくんがママに「ぼくがママのこどもでよかった?」と聞いた時にママが言った台詞です。

 

「もちろんよ!ママはかんたろうでよかった」

非常にシンプルでストレートな台詞ですが、だからこそ光る台詞だと思います。世の中のママたちの多くが共感した台詞なのではないでしょうか。

かく言う私も、あれだけボロボロに酷評しておきながらこの台詞は心から良い台詞だと思いました。

どんなに手のかかる子でも、不思議と「この子じゃなくて別の子がいい」ってならないものです。

 

それはなぜ?と問われると非常に説明しにくいのですが、この子じゃなきゃ嫌だ!と言えてしまします。もし生まれ変わっても、またこの子の母親になりたいと息子を産んでから思えるようになりました。

 

そういう気持ちが出て来ると、この台詞にとても共感を覚えます。

 

*この記事の執筆者は浅丸千代乃さんです。*