■この本を読むことになったきっかけ
朝8時の『とくダネ!』で”一般書以上に絵本がベストセラーになっていると”紹介されていたのを見て、興味を持ちました。
女性アナウンサーの方も涙ぐんでいたので、絵本とはいえ、これは読んでみたい!と思ったのです。
■本のあらすじ
交通事故で死んでしまい、おばけになってしまったかんたろうのママ。ママはまだ4歳のかんたろうの事が気になって仕方ありません。
かんたろうはママが死んでしまった事を悲しみます。
おばあちゃんにママの年齢を65歳だと周りに言っちゃった事、ママにはなくそを食べさせちゃった事、ママのパンツを履いている事を打ち明けます。
そしてその日の夜12時、かんたろうはおばけになったママと再会し、悲しくて二人で大泣きします。
おばあちゃんが起きちゃうからと夜の散歩に出かけ、ママはかんたろうに「ママはおっちょこちょいだったけど、かんたろうを生んだのは大成功だった」「ママはかんたろうのいい所も駄目な所も大好き」と言います。
朝になるとママの姿はありませんでした。かんたろうはこれからは一人で頑張ってみると決意しました。
■ママがおばけになっちゃった!読んだ感想
ママが交通事故で死んでしまうという、ショッキングな場面から物語は始まります。
親の死という非常に暗く重いテーマを、可愛らしいイラストとコミカルさで鬱々としない明るい雰囲気で読むことが出来ます。
ママとかんたろうくんの会話もテンポが良く、楽しく読める絵本だと感じました。
ここからは少々辛口になりますが、世間で評価の高い物語の内容に関しては「中途半端だな」と思いました。
子供への読み聞かせ用にしては「テーマが重く大人からの目線でずっと物語が進行する」という点が気になりました。
だからといって大人向けかと言うとそうでもなく、「死を通じて母から子への愛情を描いているけど深みが無い」と思いました。
子供向けにするにしても大人向けにするにしても中途半端で、読んだ後にじっくり何かを考えられるかと言うとそうでもない。
それは恐らく、作中の言葉の量が多すぎるからなのではないかと思います。
「ママはかんたろうが大好き」ということを、ストレートに言葉で言い過ぎてしまっていて、考える余地を読者に与えないような作りになっているような気がします。
絵本の読み聞かせは、ある一定の年齢になったら読んだ絵本について語り合うことも重要になってくると私は考えています。
その作業は作品に『読者に想像させたり考えさせる余地』を与えているかどうかで有意義になるかが決まります。明確な解答が無くても良いんです、考えることが大事です。
しかし本作は『読めば全部書いてある』というものですので、テーマが重い割には考えさせたり語り合うことが難しい作品です。
一方的に感動的な話を押し付けられておしまい、という印象を受けました。
■本の中で気になった言葉、セリフ 1シーン
感想でかなり辛口に書きましたが、作中の台詞で良いなと感じたものもあります。
主人公のかんたろうくんがママに「ぼくがママのこどもでよかった?」と聞いた時にママが言った台詞です。
「もちろんよ!ママはかんたろうでよかった」
非常にシンプルでストレートな台詞ですが、だからこそ光る台詞だと思います。世の中のママたちの多くが共感した台詞なのではないでしょうか。
かく言う私も、あれだけボロボロに酷評しておきながらこの台詞は心から良い台詞だと思いました。
どんなに手のかかる子でも、不思議と「この子じゃなくて別の子がいい」ってならないものです。
それはなぜ?と問われると非常に説明しにくいのですが、この子じゃなきゃ嫌だ!と言えてしまします。もし生まれ変わっても、またこの子の母親になりたいと息子を産んでから思えるようになりました。
そういう気持ちが出て来ると、この台詞にとても共感を覚えます。
*この記事の執筆者は浅丸千代乃さんです。*